さえぎるのではなく、上手に水を向ける
そろそろ閉店時間というときに限って、長話を始められるお客様がいます。そういうとき、「そろそろお時間ですので」とはっきり申し上げることはしません。まずは「そうですね~」と相槌を打たせていただきます。そして、頃合いを見計らって「今日はどちらへお帰りですか?」「よろしかったら場所を変えませんか」「お食事にでも行きますか」と水を向けます。そうすれば、多くの方は「そろそろ潮時かな」と気づき、腰を上げる気になってくれます。
長い話を無理にさえぎって終わらせようとすれば、誰しもいい気持ちはしないもの。相手との関係を悪くしないためには話の腰を折らないように、上手に方向を変えてあげることです。そのときに大切なのは自分の都合に合わせて方向転換するのではなく、相手の都合や立場のほうに軸足を置くこと。
たとえば、話しているお客様が、ゴルフを予定されていて翌朝早いことがわかっていたとしましょう。ひとまず話を笑顔で受け止めてから、きりのいいところで「明日は8時集合でしたよね。経済界の方は時間厳守をモットーにしてらっしゃるので、そろそろお開きにいたしませんか」と声をかけます。
「どうやって帰られますか?」と帰宅の足の心配をしてあげるのもいいでしょう。そうすれば、「もう遅いから電車はない」「では、タクシーを呼びましょうか」と相手目線でスムーズにクロージングに持っていくことができます。
取引先のお客様に対する場合も基本は同じです。時計を見て「次があるので失礼します」などといえば「俺と話したくないのか」と思われるかもしれません。そうではなく「今回はこれを宿題として持ち帰らせていただき、次回じっくりとお聞きしたい」というようにまとめる。話の腰を折らずに「次がある」ことを伝えれば、相手にストレスを与えず次につなげることができます。