ダメ上司でも、まずは褒めるべし
なぜこんなこともできない人が出世するんだろう――。そう思ったことがある人も多いでしょう。理由は大きく3つあります。
1つは、構造的に「能力のない人が上にいく」ようになっている会社が多いことです。特に中小企業ではそういう傾向があるかもしれません。
営業職の場合、「できる営業マン」は、会社としてはできるだけ現場に置いておきたいもの。管理職になって現場を離れると、会社の売り上げが落ちかねないからです。成績のいい営業マンは、現場で仕事をしながら部下の管理も担うプレイングマネジャーに留まることになります。
そうなると、たいした結果は残していないけれども、上の覚えがめでたい人が昇進することになります。このタイプは往々にして尊大な態度をとったり、おかしなことを始めたりして、現場の足を引っ張ってしまうんです。
2つ目は、プレーヤー時代は有能だったのに、上司になってダメになってしまうパターンです。私も営業マン時代、仕事上の悩みをいろいろ聞いてくれたよき先輩だった人が、上司になった途端、「俺に面倒を持ち込むなよ」というような“イヤな上司”になってしまった経験があります。
なぜこんなことになってしまうのでしょう。立場を自分に置き換えて考えてみてください。ただの先輩の立場なら、後輩がリスクのある企画をやろうとしていたら、気軽に「やってみろよ」と言えるかもしれません。しかし、上司になると、部下が何か失敗を犯した場合、その責任は当然上司側にふりかかります。さらに、その上の上司からの「数字を達成しろ」というプレッシャーもある。1先輩でいたころと同じ“いい人”でいることは案外、難しいのです。
3つ目は、そもそも上司には変わった人が多いということです。どこの会社でも、その人にしかできない無手勝流で結果を残す人がいます。私もかつての上司から、「食事どきにアポなしでお客さんの家に行って、飯を食わせてもらってこい」と言われたことがあります。信じられませんが、その人は実際にそうやって契約をとっていました。
こういう上司は営業マンとしては優秀かもしれませんが、部下をマネジメントする能力には欠けています。名選手、必ずしも名コーチにあらず。そのうえ、独自の見方で部下を評価しますから、変な人が出世し続けることになります。