【津坂】いまは世界的に転換期にあると思います。たしかに日本は「失われた20年」を過ごしました。でも、見方を変えると、これから新しい「100年勝負」が始まるところともいえます。インターネットの影響が大きいですね。英語が世界の言語になり、英語を学べば世界中とつながることができる。そしてソーシャルネットワークやEコマースなど、これまでとは秩序の違う世界が出てきました。

【茂木】同感です。僕はインターネットについては非常にパッションを持っています。僕の専門である脳科学の視点から見ると、インターネットの本質は「contingency(偶有性)」なんです。日本語に訳しづらいのですが、「必然と偶然が混ざり合う状態」という意味です。規則性はあるが、ランダムな要素もあるため、何が起きるかわからない。だから様々なリスクとチャンスがあるわけです。

こういう世界と向き合うためには、東大よりもハーバードの教育のほうが優れていることは明らかです。正解を覚え込ませる教育は「偶有性」を扱えない。

【津坂】インターネットを使えば、どれだけ夢が実現するのかということを、教育でバンバン教えていくべきですよね。大切なのは、たったひとつの正解に満足することではなく、よりよい答えを求めて常に問い続ける姿勢です。誰しもある予測のもとに計画を立てて動き出すわけですが、予測が外れても次の手を打てばいい。残念ながら、日本ではエリートほどリスクを取らない傾向がありますね。

TPGキャピタル代表 津坂 純
1961年、東京都生まれ。ハーバード大学卒業。ハーバード・ビジネススクールでMBA取得。メリルリンチ、ゴールドマン・サックスなどを経て2006年からTPGキャピタル代表。TPGは運用資本4兆円以上のPEファンド。卒業生組織である日本ハーバード・クラブのディレクター(役員)も務める。
脳科学者 茂木健一郎
1962年、東京都生まれ。東京大学理学部、法学部卒業後、同大学大学院理学系研究科物理学専攻課程修了。現在、ソニーコンピュータサイエンス研究所上級研究員、慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科特任教授。著書に『脳と仮想』(新潮社)など。
(山田清機=構成 門間新弥=撮影)
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