大事なのは「物語」。パッケージも重要なツール
昨年からコンサルティングを受けている堀内果実園は今年、「国産・完熟・無添加」のドライフルーツの新商品を発売。洒落たパッケージとサクサクした食感が受け、早くも売れ行き好調だ。実は農産品は伝統工芸と業界の前提が違うため、中川氏は受諾をためらった経緯がある。しかし、代表の堀内俊孝氏の熱心さと「同じ奈良の会社」という縁に惹かれて請け負った。
「1年半待たされましたが、工芸品と農業の共通点は手作りです。同郷の中川さんが東京で勝負しているのに触発されて、なんとしても教えを乞いたいと粘りました」(堀内氏)
話し合いで気づいたのは、千疋屋や紀ノ国屋といった店のブランドはあるが、農園ブランドはほとんどないこと。また、生鮮品は不安定だから加工食品でブランディングするのが得策ということ。そこまでは堀内氏もすぐに納得できたが、良質なドライフルーツを洒落たパッケージに入れるとしても、ふじりんご35グラムが735円、富有柿38グラムが735円など、見積もった商品の価格に「そんな高いもの、売れやしない」と二の足を踏んだという。しかし、ドライフルーツを売る場所はスーパーとは限らない。雑貨店で“雑貨”のように売れる付加価値のある商品にすればいい、という中川氏のアドバイスに目からウロコが落ちたそうだ。
「果物のラインアップも、りんごやみかんがあったほうがいいという話が出て、だけど奈良の吉野で育てるには向かないと言ったら、中川さんが“他の地域の農園から調達すればいいのでは?”と。なるほど、僕らと他の農園が一緒に成長できるよいアイデアです。簡単なようで、僕らの常識ではなかなか思いつかないことでした」(堀内氏)
さらに、中川氏に提案されたパッケージにかかる費用に驚いた。
「でも商品には物語が大事で、パッケージもその物語を伝える重要なツールであるという考え方を学びました」
堀内氏は堀内果実園ブランドのドライフルーツの比重を今後増やす予定で、この5月に株式会社化したばかり。幸先よく、先日の大日本市で受けた注文は想定の倍以上と前途洋々の予感だ。
ほかにも、福井県鯖江市の漆器企業「漆琳堂」、兵庫県豊岡市のかばんメーカー「BAGWORKS」など、さまざまな中小企業が中川氏のもと、再生への道を進んでいる。