素晴らしい技術、品質を持ちながら、衰退していく日本の伝統工芸は多い。そんな中、自らも老舗麻問屋の後継者として店をリブランディングさせた中川政七商店の13代目、中川淳氏のビジネスモデルに注目が集まっている。

日本の伝統工芸をモダンにリブランディング

中小企業の再生に、一足先に成功した中小企業が手を貸し、共に成長していく。そんなビジネスモデルが今、伝統工芸の世界で注目を浴びている。

中川政七商店の13代目、中川淳氏。

年3回、ショップバイヤーとメディア向けに開催される「大日本市」と銘打った合同展示会がある。日本各地の伝統工芸メーカーによる雑貨、ファッション、インテリアといった商材の見本市だ。主催は、創業300年を誇る麻織物の老舗、中川政七商店。13代目中川淳氏が自らの会社をモダンにリブランディングして、見事、再生した中小企業である。奈良の特産、蚊帳生地を使った大判薄手の美しい「花ふきん」が大ヒットし、全国的に知られるようになった。現在、奈良本店、丸の内KITTE内に構える東京本店のほか、駅ナカにも進出。和のブランドセレクトショップとして大きな存在感を示す。

「日本の伝統工芸を元気にする!」をキーワードに、中川氏は同じ志を持つ伝統工芸メーカーと「大日本市」を行っているが、実はその中に、中川氏に培ったノウハウを教わってリブランディングに取り組み、成果を出した企業が何社もある。

「コンサルティング業務を始めたのは、毎年、廃業の挨拶にいらっしゃる取引企業がいくつもあって残念に思ったからです。これを生業にするつもりはありませんが、日本の伝統工芸を次世代に伝えるため、また私どもの店にさまざまなよい商品を置いてもらうために一緒に成長していきたいという気持ちから、できる範囲で立て直しのお手伝いをしています」(中川氏)

経営者としての根本的な考え方からブランドのつくり方まで、中川氏は手取り足取り伝授する。コンサルティング料は高額ではない。正直、「儲からない」仕事だ。しかし、1人でも多くの経営者に元気を取り戻してほしいと、本業の合間を縫ってコンサルティングしているという。