急増するうつ病患者の人たち。治療を受けて治ったかに見えても、最初の発症から10年以内の再発率は70~80%といわれる。こうしたなか、独自の治療方法を用いて高い復職率を達成しているのが不知火病院なのだ。
「だいぶ調子がよくなって、プログラムに物足りなさを覚えるぐらいになった頃、ここのスタッフの方々がとても明るく楽しんで仕事をしていることに気づいたんです。みなさんの姿を見て、羨ましい気持ちが湧いてきました。自分もあんなふうに働きたいと思うようになったんです」
うつ病の悪化で長期休職を余儀なくされていたAさん(女性・30代・窓口業務)は、精神科病院の復職支援プログラムを約半年間利用して職場復帰に漕ぎつけた。自分を見つめ直すさまざまな課題に取り組むことで、「ものの捉え方や考え方の歪みが取れて楽になった」と語る。そして、プログラムを運営するスタッフたちの活き活きとした仕事ぶりに、「眠っていた就労意欲が呼び覚まされた」という。
Aさんが治療と復職支援を受けたのは、福岡県大牟田市の不知火病院。地方都市にある民間の中規模病院だが、1989年に日本初のうつ病専門治療施設「ストレスケアセンター」を開設して以来、先進的な医療機関として注目を集めてきた。
2003年からは復職支援を本格始動させ、10年経った現在は入院患者向け1種、外来患者向け2種のプログラムを開いている。各プログラム導入者の復職率は、直近データで86~100%というハイスコアだ。
不知火病院には、この病院ならではの特徴がいくつもある。「薬をなるべく使わない」という治療スタンスもその1つだ。まず、この件ついて徳永雄一郎院長が説明する。
「薬物療法も必要ですが、それだけでうつ病が治るかといったら、簡単にはいきません。薬で症状が治まったとしても、いずれ再発してしまう可能性が非常に高いのです。うつ病の再発率は、最初の発症から5年以内で30~40%、10年以内では70~80%といわれています。だから再発させない治療こそが重要で、そのためには心理的なアプローチが必要です。うつ病を患った原因は何なのか。本人の性格要因なのか、職場の要因か、家庭の要因か。そこを丁寧に調べながら、1人ひとりに合った治療をしていくのです」