個性派集団をまとめるときやってはいけないこと
スーパーウーマンは忙しい。
荒木田裕子、59歳。2020年東京五輪パラリンピック招致委員会のスポーツディレクターとして、世界を飛び回る。5月下旬から、大事な招致プレゼンテーションを実施したロシアのサンクトペテルブルクからスイスのローザンヌ、シンガポール、ソウル、はたまたローザンヌ……。
6月の1カ月で日本に滞在したのはわずか6日だった。日本オリンピック委員会(JOC)理事、JOCアスリート専門部会長でもある。つまりは東京招致の最前線に立ち、国内のアスリートたちをまとめている。
6月某日、台風接近の午後、東京都内のホテルのカフェでインタビューは強行された。風邪気味ゆえか、メガネの奥の目に疲労の色がにじむ。
疲れは? と聞けば、ぴしゃりと言われた。「ない」と。
「世の中にはもっと忙しい人はいっぱいいる。それに比べたら、わたしの人生、ラクだと思う」
その馬力、いやモチベーションはどこからくるのか。
「やっぱりオリンピック・パラリンピックを日本に持ってきたいもの。わたしにとって4回目の招致だけど、これほど本気になったことはなかった。前回はウオームアップなしで、いきなり走れと言われた感じだった」
過去の3回とは、1988年名古屋、08年大阪、16年東京の招致活動を指す。4年前の投票で決まった前回の東京招致では、荒木田はJOC理事となって途中から参加した。
4年前のコペンハーゲン、IOC総会の投票直前、荒木田はプレゼンターの1人として熱弁をふるった。結果は、リオデジャネイロに敗れた。複雑な心境だったことをおぼえている。
「負ければ悔しいけれど、ほんとうにやるだけのことをすべてやり切ったのか、という自問があった」