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HASAMIの食器。北欧雑貨を思わせる色使い。伝統ある波佐見焼ならではの高品質を誇る。

コンサルティングを受けた企業で、特に劇的な結果を出しているのが、最初のクライアントだった有限会社マルヒロだ。オーブン、電子レンジ、食洗機で使用できる利便性に加え、カラフルな見た目も人気の食器ブランド「HASAMI」を企画・販売する産地問屋。10年の発売以来、中川政七商店のほか、アーバンリサーチ、イルムスといったおしゃれなライフスタイルショップにも置かれ、新しい食器ブランドとして抜群の知名度を獲得している。

率いるのは1985年生まれの3代目、馬場匡平氏。父で社長の幹也氏が中川氏の著書『奈良の小さな会社が表参道ヒルズに店を出すまでの道のり。』を読み、09年7月にコンサルティングを依頼しようと息子を連れて奈良を訪れた。しかし当時24歳、それまでアパレルなどで働いてきた匡平氏は、中川氏が「この青年で大丈夫かな?」と心配になるほど、経営についても焼き物についても知識が覚束ない状態だった。「そうでしょうね、だって僕自身も大丈夫かな、と心配でしたから(笑)」と、匡平氏も振り返る。

中川氏のことは知っていたが、奈良で引き合わされたとき、初めて、父が家業の再生を自分に期待していると気づいたそうだ。「最初は親父も中川さんの話を聞いていたんですが、途中から僕1人にされて」とボヤく匡平氏だが、自社ブランドなどを始めてもうまくいかず、もう退路がないところまで近づいていた家業に、今の時代の空気とビジネス手法を取り込むのが自分の使命と悟り、やる気になった。いわば、父のスパルタ教育に乗ったかたちだ。

HASAMIというネーミングは本社所在地、長崎県・波佐見町に由来する。波佐見町は江戸時代には高級品だった磁器を大衆食器として生産しつつ、有田焼の下請け産地としても栄えた。ただ、有田の陰となり、波佐見の地名は知られてこなかった。そうした歴史を踏まえ、日本の大衆食器を支えてきた産地の誇りをブランド名に込めた。

また、若い匡平氏ならではのポップな感性を活かした、雑貨としておしゃれなデザインは波佐見の伝統的な商品になかったものだ。自身は料理をしないという匡平氏が顧客ターゲットとして頭に浮かべるのは、自分と同じくスニーカーやTシャツをこよなく愛する「飯屋や服屋で働いている友達」。当然、男子が多い。そのため、カラフルであっても、ファンシーではない、男性の部屋に置いても違和感のないユニセックスなデザインを目指した。