中川政七商店が自社で新たに立ち上げた麻ハンカチブランド、motta。箱もおしゃれ。

こうした他社との仕事の成果を中川政七商店にフィードバックし、社内コンペで新しいブランドを立ち上げる試みも始めた。条件は、そもそもは麻織物の会社だった自社が1925年のパリ万博にも出品した麻のハンカチーフを現代に蘇らせる、というもの。

「他のコンサルティングをしたことによって我々のやるべきことも見えやすくなりました。今、中川がハンカチーフを作る理由は何か?

その物語を市場に受け入れられるかたちで、どううまく表現するか。ここにブランディングの肝があります」(中川氏)

かつては家庭で「ハンカチ、持った?」と声をかけられた習慣があった。ハンカチ離れが進む現代の日本に、あらたな文化を提案したい――。そんな思いを込めた「motta」ブランドが採用された。

「まだ1人でブランドを立ち上げられる社員はいませんが、有望な人間はいます。自分の子に会社を継がせる気はないので、社員に早く育ってもらいたい。僕は今39歳ですが、50歳で第一線から退きたいと思っています」

老舗の中小企業の再生に若い感性を活かす。勤めていた大手メーカーを辞め、自ら老舗の若旦那として疾走してきた中川氏のブランドのつくり方。中小企業のみならず、ビジネスに関わる誰もが、学ぶべきヒントがある。

(松隅直樹、酒井羊一=撮影)
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