凸凹食品のケースに戻ろう。
「高級化」の方向性が見えたら、どんな顧客層に向けて売るのか決める。ここで使うフレームワークが「STP」だ。STPは市場を顧客の属性などによってセグメントに分け(セグメンテーション)、どのセグメントをターゲットにするのかを選定し(ターゲティング)、その顧客層に向けて企業や商品の特徴を認知させる(ポジショニング)。
市場はミッシーの考え方でセグメントに分けていく。切り口は年齢別、性別、購入頻度別など無数にあるが、ここでは「高級化」を念頭に置いて、年齢と収入で分類した(STEP3)。従来のインスタントラーメンは低所得者層の利用が多かったが、高級ラーメンとなると「高所得者層」と好奇心旺盛な「低年齢層」がターゲットになるだろう。
次はいよいよ具体的な施策を決める。マーテケィングは製品(プロダクト)、価格(プライス)、販売チャネル(プレイス)、販売促進(プロモーション)の「4P」から成り立っている。この4Pもフレームワークの一種。それぞれについてモレがないように施策を練っていく(STEP4)。
高級ラーメンにおいて重要なのは製品と価格だろう。中途半端な価格ではポジショニングが不明瞭になるが、高価格にしても中身が伴わなければ企画倒れに終わる。高価格にふさわしいラーメンとは――。行き詰まったらSWOT分析に立ち返るといい。そこで明らかになった食材調達力という強みを生かして、高級食材をふんだんに使った商品を開発するのもおもしろい。
さまざまな条件を考慮した結果、凸凹食品では、抽選で純金バーが当たる「フカヒレ入り皇帝ラーメン」の開発を決定した。価格は1000円。インパクトのある価格設定は、商品のポジションを明確にすると同時にSNSによる口コミ効果や、マスコミ取材による宣伝効果を期待する狙いもある。
「フカヒレ入り皇帝ラーメン」という商品企画だけを見れば単なる思いつきに映るかもしれない。しかしフレームワークを用いることで企画が生まれた思考プロセスが明確になり、他の人でも検証が可能になる。それが個人の勘や経験から生まれた思いつきとの大きな違いだ。
ちなみにセブン-イレブンの高級おにぎりやロッテリアの松坂牛バーガー1800円など、食品関連では高級化戦略が珍しくない。それらも何らかのフレームワークによって導かれたのではないかと私は推測している。はたして凸凹食品の高級ラーメンは、あとに続くことができるのか。乞うご期待である。
(※図版は取材をもとに編集部作成)