プロジェクト会議では、最初から具体的なアイデアがどんどん飛び交った。深い議論も尽くした。まさに理想の会議だと思われたが、決定したプランを実行に移したところ、まったく結果がついてこなかった――。

日本の会社でときどき見かけるパターンの1つだ。どうしてこのようなことが起きるのか。それは私たちが垂直思考にハマりやすいからだろう。垂直思考とは、ある部分だけを徹底的に掘り下げて追求する考え方のことだ。垂直思考に陥ると、目の前のディテールばかりを追いかけて全体が見えなくなる。そこで導かれる答えは「部分最適」であり「全体最適」ではない。それゆえ実行しても良い結果に結びつきづらいのだ。

物事のディテールにこだわる傾向は、「ボトムアップ思考」の弊害といってもいい。日本企業は現場から生まれたアイデアを重視する。そのアイデアの是非が、全体の目的に照らし合わせて判断されるなら問題ない。しかし実際は、現場レベルの狭い世界の論理だけで判断されるケースが少なくない。目の前の課題を改善することで商品の高性能化を進めてきたが、いざ開発してみると市場のニーズとズレていてまったく売れなかったという話はよく聞く。これも目の前の問題だけにフォーカスして全体を見失っていたからだ。

物事を考えるときに何より重要なのは「全体観」である。全体を貫く大きな目的は何なのか。それを実現するために、どのような中目的や小目的があり、どのような要素で構成されているのか。そうした全体像を掴めば、大事なところを放置して、どうでもよいところに労力を注ぎ込むようなムダをなくせるはずだ。

全体感を把握するために活用したいのが「フレームワーク」である。フレームワークとは、物事の全体の構成要素をわかりやすく表現する枠組みをいう。頭の中で考えるだけではモヤモヤしてよくわからないことも、フレームワークを使うことで可視化され、すっきり整理できる。