しかし仮にスキームが身についたとしても被災直後は情報の需要が情報の供給を上回り、誰もが飢餓状態になる。それが流言やデマを生む素地になる。そこで荻上氏は「政府や自治体、メディアがタイムラグなく透明な情報を公開して、情報の需給ギャップを供給側が埋める努力をするべき」と指摘する。
その一方で個人としては流言・デマを完全に防ぐことは不可能と心得て、それが善意からであっても安易にリツイートしない自制心が求められる。「間違った情報は、だいたい30分くらい待つと、他のユーザーから訂正が入ることが多い」(中村氏)というから、一呼吸おいてみるのもいいだろう。また、情報を発信するときはソースを示すなど、誰でも情報を検証できるような手がかりを示すことも必要だ。
情報弱者であることに負い目を抱く必要はない。「メディア大変革による騒ぎ」が収まれば誰もが何らかの情報機器を扱えるようになり、情報が得られないというレベルの「情報弱者はいなくなる」(中村氏)からだ。その代わり、誰もが情報を扱うようになると、情報発信の責任の重さに思いが至らず、みんなが誤った情報を垂れ流す「情報加害者」になるリスクも高くなる。
「単に騙されない人のことを情報強者というわけではなく、正しい情報を発信するというノーブレス・オブリージュ(強者の義務)を果たすことのできる人が真の情報強者」(荻上氏)であるという自覚が求められる時代に、私たちは生きている。
(写真=PIXTA)