3分早歩き、3分ゆっくり歩き。それを繰り返す「インターバル速歩」。1日30分行うだけで、腰痛、ひざ痛、肩こりはもちろん、生活習慣病、気分障害、睡眠の質、認知機能なども改善するという。科学が実証した歩き方を解説する。

約5カ月継続すれば体力が最大20%アップする

「ウォーキングは健康によい」「毎日1万歩を歩けば健康維持になる」と言いますが、実は単にダラダラゆっくり歩いているだけでは、体力向上の効果にはつながりません。

これには運動強度(運動の負荷やきつさの程度)が関係しています。のんびり歩く程度では、運動強度は自身の最大体力の30~40%しか発揮されず、たとえ、1万歩を歩いたといっても体力がつかないのです。確実に体力をつけたいなら「自身の最大体力の60%以上の強度の運動」が必要です。

では「どれくらいの速度」「どれくらいの頻度」「どれくらいの時間」行えばいいのかという疑問が湧くと思います。その答えの根拠となるのが、私たちが研究を積み重ね導き出した「インターバル速歩」です。20年足らずで1万人以上の中高年者から得たデータがベースとなっています。これは、本人が「ちょっときつい」と感じるくらいの負荷をかけた「早歩き」と「ゆっくり歩き」を3分間ずつ交互に繰り返すウォーキング方法です。

早歩きのペースは、少し息が弾む程度(最大体力の60%程度の運動強度)が目標。これには生理学的な理由があります。運動を始めてから1?2分ほど経つと乳酸という物質が筋肉に溜まりますが、それが体に「きつい」と感じさせる正体です。その後ゆっくり歩く時間を設けることで乳酸が代謝され、また次の速歩に取り組めるようになるわけです。

これを1日5セット、週4日以上繰り返すと、約5カ月で体力が最大20%向上し、生活習慣病の症状が20%改善、そして、うつや関節痛などの症状も30%以上改善するということが明らかになっています。この結果、医療費も約20%削減できました。ちなみに「体力が最大20%向上」というのは、10歳以上若返った体力が得られるイメージです。

現在、日本の医療費は約50兆円。国家予算(約115兆円)の約半分です。もし全体の医療費が20%削減できたとしたら、10兆円が削減できるのです。

私たちの調査では、「体重が減ってきた」というわかりやすい例のほか、「夜よく寝られる」「仕事のストレスに強くなった」「体が軽くなった」「血圧が下がってきた」「すぐに汗をかいて疲れやすかったが暑さに強くなった」という人もいました。また「姿勢がよくなった」「肌に張りが出てきた」など美容面での効果を指摘する声もあります。このように、見た目が変わる、QOLが上がってきたというのが自覚できるようになるわけです。実に簡単な方法ですが、効果は覿てき面めんです。

インターバル速歩後に軽い筋肉痛を感じる人もいるでしょう。これは筋肉のエネルギー消費量に対して酸素が不足し、その結果、筋肉に軽い損傷が起こるからです。これを予防するには、運動直後に牛乳を飲むのがおすすめです。牛乳には炎症反応を抑えるだけでなく筋肉を太くする働きがあるのです。これは次に述べるメカニズムで、インターバル速歩の生活習慣病予防効果を促進します。

中高年は筋力と持久力を同時にアップできる

そもそも「体力」といえば、多くの人は「病気にかからず健康を維持する能力」を連想するかと思います。一方、運動生理学では「体力」は、「筋力」と「持久力」のことを指します。筋力は重量挙げのように、瞬発的にどれだけ強い力を出せるかという能力です。一方、持久力はマラソン選手のように中くらいの強度の運動を持続できる能力のことです。

ところが人は誰でも、20歳前後に体力のピークを迎え、その後、30歳をすぎるあたりから10歳加齢するごとに5~10%ずつ落ちていきます。なぜそのようなことが起こるのでしょうか。それはサルコペニアという加齢に伴う筋肉量の減少が起こるからです。これは加齢現象の一つですから、誰も逃れることはできません。

(構成=篠原克周 図版作成=大橋昭一)