「年上の部下とどう接すれば良いのか」
こんにちは、産業医の武神健之です。私のクライエントの外資系企業では、年功序列の慣習は薄れており、ジョブ型・実力主義の評価体系が標準です。その中では、「部下が年上、上司が年下」という組み合わせはもはや珍しくありません。しかし、年齢と役職が逆転した職場で生じる摩擦もあります。
「年上の部下とどう接すれば良いのか」「プライドを傷つけずに指導するには」「ベテランの反発をどう乗り越えるべきか」といった年下上司の悩み。一方で、「なぜ自分より若い人間に指示されなければならないのか」「長年の経験は評価されないのか」といった年上部下の不満や葛藤。こうしたコミュニケーションの齟齬は、時に職場の雰囲気を悪くするだけでなく、個人のパフォーマンス低下や、ひいてはメンタルヘルス不調を引き起こすリスク要因にもなっています。
そこで今月は、タフでハードとされる外資系企業の現場で実際に成功を収めている年下上司たちに焦点を当て、具体的な事例を交えながら、年齢の壁を乗り越え、誰もが健康的に、前向きに働けるチームを築くための3つのヒントを示したいと思います。
この内容が、あなたの職場でのコミュニケーション、そしてあなた自身の心の健康を守る一助となれば幸いです。
「客観性」が年齢を乗り越える土台に
1.納得を生む透明な評価と敬意
年上部下との間で良好な関係を築き、チームとして成果を出している年下上司に共通している1つめのポイントは、評価の透明性と、それを基盤とした相互の敬意です。実力主義が浸透している外資系企業においては、個人のパフォーマンスが数値や明確な指標で示されることが多く、この客観性が年齢という要素を乗り越える土台となっています。
例えば、営業職であれば個人の売上(達成率)、プロジェクトマネージャーであれば担当案件の完遂度やコスト削減効果など、誰もが納得できる具体的な指標に基づいた評価が行われます。このような環境下では、年下上司は部下の年齢やこれまでのキャリアに過度に囚われることなく、純粋にそのパフォーマンスに基づいた指導やフィードバックを年上部下にも行うことができます。そして、年上の部下もまた、客観的なデータに基づいて自身の現状を理解し、改善の必要性を納得しやすくなります。

