シュークリームが「10円」1日に50万個を販売

かつて多くの家庭ではケーキは誕生日かクリスマスのときくらいにしか食べられない高価な商品でした。シュークリームも、毎日のおやつとしてお子様がみんな手軽に食べられるわけではなかったのです。昨年8月に90歳で亡くなった創業者の齊藤寛は常に「商売の基本は小銭だぞ」と私たちに教え、シャトレーゼは「おいしくてお値打ちなお菓子」を大切にしています。

古屋 勇治氏
撮影=門間新弥
古屋 勇治
1964年、山梨県甲州市出身。85年シャトーゼ入社。2000年に白州工場長、02年に豊富工場長を歴任し、17年に副社長、18年に社長に就任。製造現場での経験を活かし、商品開発や改善に現場の声を反映する経営を徹底している。

齊藤は1954年、故郷の山梨で今川焼き風のお菓子の製造販売を始めました。あんこ作りには北海道産の小豆、質のいい上白糖、山梨の非常にきれいな天然水と、安全で安心な本物の素材を使うことを決して変えませんでした。店舗の数は県外も含めて10店を展開するまでになりましたが、いかんせん商品が売れるのは冬場ばかりです。そこで、夏にも売れる商品をと、64年、アイスクリームの製造にも参入しました。しかしながら、大変苦労いたしました。大手メーカーの下請けを行い、最終売価の半額、もっと低い場合は3分の1くらいの卸値に買い叩かれてしまう。ついに齊藤は「ならば私たちが直接卸値でお客様に売ろう」と大胆な決断に踏み切ります。