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バブル崩壊以降、「ピラミッド」から「なべぶた」へ

いったい何が、「突然化」「二重化」「多様化」をもたらしたのでしょうか。その背景にあるのは、組織構造と雇用形態の変化です。

バブル崩壊以前の日本企業は、正社員中心の「ピラミッド型組織」でした。一般社員から主任、係長、課長補佐と、役職を徐々に上がることが管理職の前段階のトレーニングとして機能していました。

ところが、90年代以降、意思決定のスピード化、生産性の重視、人件費削減を目的として組織のフラット化が進み、日本の組織は徐々に「なべぶた型組織」へと変化していきます。その結果、「課長」になるまでの細かな役職は廃止に。職場の人数が減り、「課長」と現場との距離が近くなったため、プレイングマネジャー化が進行してきました。また、規制緩和が進んで雇用形態が柔軟になったため、多様な人々が職場でともに働くようになっていったのです。

「地位」から「役割」のひとつへ

では、これから「課長」はどのように変化していくのでしょうか。残念ながら、現在の潮流、すなわち「しんどさ」が強まることはあれど、弱まることはないと思います。現在「課長」の人も、これから「課長」になる人も、この荒波を前向きに捉え、自己の能力やキャリアを磨くことが大切です。そのためのポイントは3つあります。

まず第1に、「課長」が役割やプロセスであると認識し、現場感覚を失わないことです。

「未来の課長」は、ゴールとなるような「地位」ではなく、仕事人生の一時期に担う「役割」のひとつになっていくものと考えられます。現在の組織では上級ポストの数にも限度があります。また定年延長の動きもあり、65歳まで管理職でいられる人は限られるようになります。将来は、一時期「課長」を務めた後、実務担当者に戻ったり、後輩の指導にあたるなど、フレキシブルなキャリアがつくられていくでしょう。

そのような状況下で生き残るには、マネジャーであっても自分ならではの業務経験や専門性を持ち、常に現場感覚を失わないでいることが大切です。プレイングマネジャーと聞くと、ネガティブなイメージを想起する方も多いかもしれません。しかし、これからはむしろ、プレイヤーとしての時間を持つことが、いざ実務担当者に戻ったときのセーフティネットとして機能するでしょう。「度を超したプレイング」は業績に悪影響を与えることが筆者の研究で実証されていますが、マネジャーとプレイヤーのバランスをとりつつ、「現場離脱を避けること」は、今後のキャリア形成にとって重要です。