突然ですが、みなさんは「課長」にどんなイメージがありますか?

1970~80年代の映像資料を調べると、その当時のサラリーマンにとって、課長は「憧れ」の存在だったことがわかります。会社に入ったからには、是が非でも到達したい目標・ゴールでした。しかし、そんなかつてのイメージも、バブル崩壊以降、急速に変わりつつあると言われています。

実際、今、私と同世代である30代後半のもうすぐ課長たちや課長になったばかりの人々に話を聞くと、「しんどい」「仕事がキツイので、昇進には躊躇いがある」という意見が寄せられることもあります。「課長」(ミドルマネジャー全般を指す)は、わずか30余年の間に「無条件に光り輝くゴール」から「サバイブするプロセス」へと変わってしまいました。私も大学で、小さな研究部門の長を務めており、マネジメントの「しんどさ」については、みなさんのレベルとは雲泥の差がありますが、共感できるところもあります。

なぜ、過去数十年にこのような変化が起きたのか。今、わたしたちは何に留意して「課長時代」をサバイブすればいいのか。そして将来、「課長」はどう変わり、それに向けてどう備えればいいのか。以降、考えていきましょう。

課長が「しんどい」3つの理由

そもそも今、なぜ「課長」になることが「しんどい」と思われているのでしょうか。一般社員時代と給与・待遇がほとんど変わらない、あるいはかえって悪くなるという課題もありますが、それ以外に理由は大きく3つ考えられます。

1つは「突然化」。90年代以降、主任、課長補佐、課長代理など細かな役職が廃止され、多くの場合、昨日まで一般社員だった人が、十分な学習機会もなく、一夜にして「課長」に就くようになりました。指示をされる側が突然、指示をする側になる。そのギャップの大きさが、1つ目の「しんどさ」を招いています。

2つ目は「二重化」です。12年に筆者と日本生産性本部が行ったミドルマネジャーに対する共同調査によると、「100%マネジャー業務だけをやっている」と答えた人は、531人中14人だけ。つまり、今やプレイヤーとして働きながら、マネジメントの仕事もこなすプレイングマネジャーが、一般的な「課長」の姿。となると当然、業務量が問題になります。

3つ目は、マネジメントする対象の「多様化」です。契約・派遣社員、あるいは外国人など、同じ職場で多様な立場の人が一緒に働くようになっています。また、「年上の部下を持つことが悩み」という声も多く聞かれます。立場の異なる様々な部下に対応しなければならないという難しさも、「しんどさ」につながっています。