革新的な起業家の4つの共通点

幅広い知の探索と既存の知の深化、その両方を追求する経営を「両利きの経営(Ambidexterity)」と呼び、アメリカの経営学会でさかんに研究が行われていることを前回(http://president.jp/articles/-/9433)申し上げました。

なぜ今、両利きの経営が注目されているかというと、ビジネスの不確実性が高まっており、それに対応するため、企業が不断のイノベーションを迫られているからです。そのために必要なのは既存の知と知を組み合わせ、新しい知を生み出すこと(探索)と、その知を深掘りすること(深化)、つまり「両利き」の経営です。そして、多くの企業は「深化」に偏りがちで、「探索」がおろそかになるので、中長期的にイノベーションが生み出せなくなるリスクがある、というのが前回の骨子でした。

この場合の「企業」を「個人」に置き換えてみてください。今はキャリア形成の不確実性も高まっている時代です。個人の知はすぐに陳腐化し、資格を取っても安泰ではありません。大企業に入ったところで「寄らば大樹の陰」は通用しなくなってきています。そこで提案したいのが、この両利きの経営の発想、なかでも「知の探索」を個人のキャリア構築に生かすことです。

具体的にはどうしたらいいのでしょうか。そのヒントになる研究があります。それはイノベーション研究の大家、ハーバード大学のクレイトン・クリステンセン教授がある学術誌で発表した論文です。この研究でクリステンセン教授は革新的なイノベーションを成し遂げた起業家22人にインタビューして、彼らに共通する4つの思考力を導き出しました。

1つ目はあらゆる常識を疑う力、2つ目は気になった事象を徹底的に観察する力、3つ目は仮説検証を絶え間なく行う力、最後が他人のアイデアを借りる力です。