政治家がテロに狙われてしまう理由

警戒中の警視庁捜査員によって逮捕されたのは東京・杉並区に住む無職の30歳の男だった。警視庁によると男は「立花氏を殺そうと思った」との趣旨の供述をしているという。またその後の調べで、凶器はナタで犯行の際に「閃光手榴弾」が用いられたことがわかった。

2022年7月の安倍晋三元首相、2023年4月の岸田文雄首相(当時)に続き、またしても衆人環視の前で発生してしまった政治家へのテロ事件。世界のVIPなどの要人警護を行っている国際ボディーガードの小山内秀友氏は今回の事件についてこう指摘する。

「今回のような政治家・選挙候補者等の場合、政治的思想の相違などが原因で恨みを買いやすく、できるだけ多くの人に活動を知ってもらうために、事前に活動場所や時間などを公開しているケースが多い。

不特定多数の人との接触を本人が希望していることなどから、セルフ・ディフェンス(自己防衛)や身辺警護は通常よりも難しい状況になる。また著名人であるがゆえに、襲撃等の様子が報道されやすく、世間へのインパクトを与えやすいことも襲撃の要因となることがある」

もし2度目の攻撃が起きていたら…

さらに小山内氏は、今回の襲撃の背景となる三つの要因を挙げる。

「著名人・一般人に関わらず、襲撃などの危険が発生した際に自分自身や守るべき対象の安全を確保するためには、その危険と物理的な距離を取るのが基本。しかしながら今回の事件を見てみると、襲撃後も現場に高い脅威が残ったままの状況で、安全は確保されていなかった」

小山内氏によると、まず一つ目の問題点は、襲われた立花氏がすぐに現場を離れなかったことだという。

「立花氏の周囲にいた関係者が立花氏を現場から離脱させておらず、事件発生後しばらく立花氏が現場に留まることになったのは大問題。相手が本気であれば、また他にも仲間がいるような状況であれば2度目の攻撃があったかもしれなかったからだ」

二つ目の問題点は、近くにいた警察官らが襲撃者をすぐに取り押さえなかったことだ。襲撃者が立った姿勢のままで一般人に軽く押さえられているだけの状況であったため、その気があればすぐに攻撃を再開できる状態だったと指摘する。