東京・霞が関の路上で3月14日、政治団体「NHKから国民を守る党」の党首・立花孝志氏が男にナタで切りつけられ、頭や首、左耳を負傷した。現場には多数の警察官が配置されていたにもかかわらず、なぜ襲撃事件を防げなかったのか。現場に居合わせたフリーライターの一木悠造さんがリポートする――。
現場では「財務省解体デモ」が行われていた
財務省解体を主張する抗議活動が連日繰り広げられている、東京・霞が関。筆者は3月14日、この場を偶然通りかかり事件に遭遇した。
午後4時前。すでに消費税廃止のプラカードを掲げる人などデモ参加者が財務省正門前を中心に続々と集まってきていた。警視庁機動隊員や私服捜査員の姿も見える。警戒中の警察官に尋ねてみると、N党の立花孝志氏が街頭演説を行うという。
しばらくすると、続々とデモ参加者が集まり始め、財務省前の歩道が賑々しくなってくる。警戒中の機動隊員が歩道に立ち止まらないよう呼びかけていた。なぜこんなに人が集まるのか?この財務省前デモが気になり、参加者に取材を試みた。
筆者が話を聞いたのは50代の女性。SNSを見て初めてデモに参加するのだという。
「私たちの声が財務省解体までつながるとは思っていないけど、声をあげることが大事」
立花氏の演説も加わり、警察も厳重警戒
連日繰り広げられる財務省前デモに対し、警視庁もこの日は異例の規模の態勢を組んでいた。
元警視庁公安捜査官でセキュリティアドバイザーの松丸俊彦さんが明かす。
「デモに加えてN党の立花孝志氏も財務省前で演説を行うというSNSなどの情報もあり、警視庁も大掛かりな視察体制を取りました。警視庁からは公安部公安総務課や右翼担当の公安3課などが視察を行い、また保釈中の黒川敦彦氏(「つばさの党」代表)が演説を行うという情報から刑事部捜査2課も視察に加わったはずです」
午後4時半ごろには黒川氏が財務省前に現れた。支援者が演説を行った後、演説を始める。
少し離れた位置から警視庁公安部員がメモを取っていた。警戒する機動隊員たちも配置を固め、動きが慌ただしくなる。
午後5時を過ぎたころ、財務省の前の道路を挟んだ経済産業省前に立花氏の選挙カーが到着。街頭の支援者らから拍手と歓声が上がった。