大恐慌の歴史は繰り返すのか
足許、世界的な貿易戦争激化の恐れは高まっている。米国が発動した鉄鋼とアルミニウムに対する25%の関税に対して、欧州連合(EU)とカナダは報復措置を発表した。中国も、米国の農産物に対する追加関税の引き上げの対抗措置をとる。トランプ氏は、そうした各国の対応に対し厳しい対抗措置をとると明言している。トランプ政権の関税率引き上げをきっかけに、世界的な貿易戦争に発展する様相を呈している。
そうした動きは、1920年代後半からの大恐慌時、当時のフーバー大統領の関税引き上げ政策を彷彿とさせるものがある。フーバー大統領は、世界経済の落ち込みに対して自国産業を守るため関税を大幅に引き上げた。それがきっかけに世界貿易戦争に発展し、大恐慌を深刻化させることにつながった。
これまで世界を牽引してきた米国経済は、ローン延滞率の上昇など不安要因が顕在化し始めている。それに加えて、トランプ政権の関税引き上げ政策でインフレ懸念の再燃などの不透明要因が増えており、景気後退懸念も少しずつ高まっている。先行き不透明感の高まりで米国では株価が下落し、ドル離れの動きから金の価格は史上初めて3000ドル/オンスを突破した。
米国の混乱の最中、中国はわらう
そうした不安定な経済状況の中、中国の株価は上昇基調だ。その主な要因として、激化する貿易戦争の状況下、中国が有利な位置をとれるとの見方が増えていることがある。近年、AI分野での追い上げが顕著だ。また、中国企業は電気自動車(EV)、太陽光パネル、車載用のリチウムイオンバッテリーや絶縁材分野で大量生産体制を確立し、価格帯の低いボリュームゾーンをおさえた。
ヨーロッパでも、中国企業は米国の関税政策の間隙を縫ってEV分野で地歩を築いている。米国が関税引き上げに注力している隙に、中国は米国の関税政策と直接関係のない国や地域との関係を強化し、貿易戦争の中で“一人笑っていられる”地位を手に入れつつあるように見える。