「世界は米国から金をむしり取っている」

トランプ政権の発足以降、米国政府は中国、カナダ、メキシコに対する関税を発動した。品目別の関税賦課も実施し、鉄鋼・アルミの関税を引き上げた。トランプ氏は、「世界中が米国から金をむしり取っている」と発言し、貿易相手国に対する強硬姿勢は鮮明だ。

米金融大手キャンター・フィッツジェラルドのトップを務めた、ラトニック米商務長官は、「鉄鋼・アルミニウムに対する25%の関税は、国内生産が回復するまで続ける方針である」という。トランプ氏は、EUの報復措置のバーボンウイスキーやハーレーダビッドソンのオートバイに対する関税を批判した。対抗措置として、ヨーロッパ産ワインをはじめアルコール飲料に200%の関税をかける考えを示した。

3月10日、カナダ、オンタリオ州政府のフォード首相は、対抗措置として対米電力料金の引き上げを表明した。将来的な送電停止にも言及した。その後、トランプ氏はカナダの鉄鋼・アルミ関税を50%にすると脅した。最終的に、オンタリオ州の首相は電力料金の引き上げを撤回した。

日本のコメが「700%の関税」というデマも

トランプ氏の主要国への対応からは、「米国は相手が譲歩するまで関税を引き上げ、自らの考えに従わせる」ということだろう。米国が、相手国が設けている関税や非関税障壁(税制や市場慣行、規制)を加味し対等と考えられる“相互関税”を実施する可能性は高いと考えられる。

一連の関税引き上げは米国、および世界経済にマイナスの影響を与えるだろう。この点に関してベッセント財務長官は、そうした影響は一時的な“デトックス(解毒)”だと指摘した。

民間部門の活力向上に加え、関税を引き上げて経済安全保障体制の再整備を進める。それは、一時的に企業の供給網再編などのコストを伴うが、中長期的には米国経済の成長期待の向上に寄与する。それがベッセント氏の考えなのだろう。問題は、それが一時的なコストで済むか否かだ。長期化すると、そのデメリットは米国だけではなく、世界経済の下押し圧力になる。

トランプ政権は、わが国が輸出するコメについても「関税率が700%と高すぎる」と誤った数値で批判した。安全保障を米国に頼るわが国にとって、トランプ政権が重視する関税引き上げ、それによる貿易戦争激化といったマイナスの影響は軽視できない。