TOPIC-3 整理・収納本が「夢」を語り出すまで
前回みてきたのは、掃除が修養に結びつく、掃除が社風の改善に寄与して成果につながるという考え方が、バブル崩壊以後に注目を集めるようになったということでした。しかしこれは、書き手も、事例に登場する人物も、おそらくは想定されている読み手も、すべて男性(特に経営者や管理職)を主とするものでした。しかし近年の掃除・片づけ本ブームが想定する読み手はより広範なものと考えられ、近藤麻理恵さんややましたひでこさんの著作の読者の多くは女性だと考えられます。つまり、女性向けの書籍のなかにも、掃除・片づけと自己啓発の結びつきのルーツを探っていく必要があります。
そこで今週は、女性向けの掃除・片づけに関する書籍の系譜をさかのぼってみたいと思います。これには掃除や片づけだけではなく、整理、収納に関する書籍も含まれます。つまり総体的に、家事全般に関する書籍が自己啓発化していくプロセスを押さえようというのが今週の目的です。
とはいえ、昔も今も、こうした書籍の基本的傾向は、「掃除は掃除」「片づけは片づけ」「収納は収納」「整理は整理」というものです。つまり掃除等は部屋や家をきれいにするためのものであり、それ以上何も求めるものはない、ということです。改めて言葉にしてみると、当たり前のことですね。しかし、こうした掃除等に、徐々に自己発見や自己啓発が結びついてくるようになります。その行き着いた先が、近藤さんややましたさんの著作だと考えられるのですが、その結びつきのプロセスを以下、見ていくことにしましょう。