TOPIC-4 「片づけ(られない)」への注目

ここまで、掃除・片づけ・整理・収納に関する書籍を一緒くたに論じてきましたが、これらのテーマには一つだけごく最近になって登場したものがあります。それは「片づけ」についての著作です。順番としては、主婦向けの掃除に関する書籍は1960年代以降、整理・収納に関する著作は1970年代以降連綿と刊行され続けているのですが、「片づけ」という言葉がタイトルに冠された書籍は1990年代、より具体的には前回紹介した飯田久恵さんの『生き方が変わる女の整理収納の法則 住まい&オフィスで片づけ上手になる極意』が刊行される1995年まで待たねばなりません。

片づけと整理は一見、ほぼ同じようにみえますが、近年の片づけ本のなかではそれらは異なるもので、整理よりもまず片づけこそが行われるべきことだと語られます。そして、この差異化が片づけ本の重要ポイントなのです。では、その差異はいかにして生まれていったのでしょうか。今週はこの点から考えてみたいと思います。

今述べた差異について簡単に解説しておくと、近年の片づけ本でいわれるのは、整理や収納、掃除は自分がコントロールできる程度までモノが減った状態になって初めて意味があるのであって、まずモノを減らす、より端的には「捨てる」ことが行われるべきだという話です。そこから、自分にとっての必要なモノを厳選し、そこから自分が分かり、といった話に展開していくわけです。

この「捨てる」ことから始まる片づけという考え方のルーツは、近藤麻理恵さん自身が影響を受けたと述べていることですが、2000年のマーケティング・プランナー辰巳渚さんによる『「捨てる!」技術』にあると考えられます。ただ、捨てることへの注目はその1年前から始まっているので、そこからみていくこととします。