「朝ドラ受け」の変化
中盤以降もズルズル視聴率が下落する傾向に対して、「あさイチ」も対応を変えていた。朝ドラ受けを大幅に減らし始めたのである。
コラムニストの堀井憲一郎氏によれば、「虎に翼」では100話までに67回朝ドラ受けが行われた。ところが「おむすび」では、その数が約3分の1減らされていたというのである。
それでも依然として回数は多い。前番組を話題にするのは、生放送を印象づけられる良策だ。視聴率の下落を1~2分でも抑えられるのなら、積極的に採用しない手はない。
ところがドラマの評判がイマイチとなれば、策を講じるしかない。ヒロインの橋本環奈が登場しても下落率が大きかったのだが、制作側は当然のこと状況が分かっていて対応を決めていたのだろう。
伏線回収の落とし穴
では「おむすび」は何がダメだったのか。すでに平成ギャルの“自分探し”が、今の中高年には関心外だったことは述べた。ストーリーの中には序盤から違和感のある展開がいくつもあり、突っ込みどころ満載だった。
そのモヤモヤは第21週「米田家の呪い」(2月24~28日放送分)で判明した。
結(橋本環奈)の父・聖人(北村有起哉)と祖父・栄吉(松平健)との軋轢の謎が判明し、ふたりがはじめて分かり合う。しかも“ほら話”ばかりと思われた栄吉の過去が、葬儀の際に全て本当だったことが明らかになる。ある意味、感動的な1週間だった。
この展開を「根本ノンジ脚本の真骨頂」とする意見がある。確かに第1回から「米田家の呪い」という言葉がドラマ内で繰り返し登場した。「困っとう人ば助けるのに、理由やらいらんやろ」という栄吉の言葉が、視聴者に大きな感動と共に届けるために序盤の展開があったというのである。
しかし少し待ってほしい。「5カ月後の感動」のために、序盤4週間も続く違和感を我慢させられる視聴者のストレスは大きくなるばかり。平成ギャルの“自分探し”に留まらず、聖人と栄吉の不仲ぶりや栄吉の突拍子もない言動が延々と展開され、「この物語は我々をどこに連れていくのか」不安になった視聴者は少なくない。それが序盤で視聴者の2割が流出し、ドラマのヒロインが「プレミアムトーク」に登場しても挽回できなかった最大の要因なのではないだろうか。今や、次回の朝ドラである今田美桜主演の「あんぱん」を早く見たいとの声もよく聞かれる。
教訓はシンプルだ。テレビドラマの視聴者は、自分の関心事をしっかり柱に置いてほしいと思っている。そして忙しい現代の視聴者は、半年間をずっと見続ける前提でテレビの前にいるわけではない。1日15分、あるいは月~金の5回を費やした分の満足感が不可欠だ。
「最後まで見れば感動的でしょ?」。送り手側にそんな論理があったとすれば、それは甘い。種明かしをして伏線の回収時の感動を大きくしようとするあまり、苦行を視聴者に強いてはいけない。感動の予感を序盤から匂わせたり、小出しにしたりしてうまく伝えてこそ、名作となれる時代なのである。
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