英文法は難しい。スムーズに理解する方法はないのか。マナビメイト代表で最難関中高一貫校の生徒1000人以上に英語を指導してきた渡辺雄太さんは「成り立ちを学ぶことが大切だ。例えば、現在形は現在だけを意味するのではない。その理由は現在形の用法の成り立ちを学ぶことでわかる」という――。

※本稿は、渡辺雄太『英文法は語源から学べ!』(SBクリエイティブ)の一部を再編集したものです。

テニスボール、ラケット、コートグラウンド
写真=iStock.com/PeopleImages
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現在形は「幅のある時間」を意味する

現在形は「現在」だけを意味するのではない。「幅のある時間」を意味し、場合によっては「未来」を意味することもある。こんな説明を聞いたことはありませんか?

現在形なのに「未来」を意味するとは、一体どういうことでしょう。「未来」を意味するwillとの違いは、一体なんなのでしょう。この説明だけ聞いて納得するのは、難しいのではないでしょうか。

なぜ現在形が「幅のある時間」を意味するのか。なぜ「未来」の意味を持つのか。現在形の用法を成り立ちから見ると、その本質が見えてきます。

もともとは「現在」「未来」「進行」などを表した

昔の英語では、「過去」「現在」「未来」などの区分が現代英語ほどハッキリしていませんでした。過去形と現在形でさまざまな意味を表現していたのです。例えば、現在形は「現在」「未来」「進行(進行中の動作など)」といった意味を持っていました。

現代英語に近づくにつれ、助動詞willや現在進行形などが生まれ、「未来」や「進行」の意味をそれらの表現が担当するようになりました。

【図表1】昔の英語では過去形と現在形でさまざまな意味を表現していた
出所=『英文法は語源から学べ!』(SBクリエイティブ)

特に注目すべきは、「進行」です。「進行」は「一時的な継続」を示す表現です。詳しくは次節で触れますが、現在進行形be Vingは、「(一時的に)いま~している」という意味で使用されます。

I am playing tennis now.
「(一時的に)いまテニスをしている」(一時的な継続)

「いまテニスをしている」という行為は、短時間の継続です。「ボールを打ち、走って……」という行為は、せいぜい数時間の継続が限界です。「進行」は、「一時的な継続」を表現します。

現在進行形が「一時的な継続」を担当するようになった結果、現在形に残ったのは「幅のある時間」です。現在進行形が比較的短い時間幅の表現だとすれば、現在形は長い時間幅を持つ表現といえます。

【図表2】現在形は長い時間の幅を持つ表現
出所=『英文法は語源から学べ!』(SBクリエイティブ)

例えば次の例文を見てください。表面上の日本語は、現在進行形の「テニスをしている」と同じです。ただ、意味が全く異なります。時間幅を持つ「現在の習慣」の意味で使用されています。

He plays tennis every day.
「彼は毎日テニスをしている」(現在の習慣)

「今日もやる」「昨日もやった」「明日もやるだろう」と、現在形が「現在」のみならず、「過去」「未来」の意味も含んでいます。現在形は、「現在」を中心に「過去」「未来」に幅を持つ表現なのです。次の例文も同様です。どちらも時間幅を持つ「現在の状態/事実」を述べています。