疲れやすい人は、体のどこに問題があるのか。理学療法士の中村尚人さんは「アライメント、つまり『骨の配列』が何よりも重要だ。体の条件を整えることで、成果は大きく変わってくる」という――。

※本稿は、中村尚人『逆腹筋の教科書 人体の構造的に正しい腹筋運動の新標準』(KADOKAWA)の一部を抜粋・再編集したものです。

パフォーマンスを最大化する条件

私は常々、「人間の体は『アライメントファースト』だ」と言っています。

アライメントとは、靭帯や関節によって結合されている、骨の配列のことです。

人間の体は骨や関節が正しい位置関係にあることで理想的な姿勢を保つことができ、かつ体のさまざまな機能が担保されます。人間の体は、アライメントが整い正しい位置関係にあるという条件においてのみ、すべての筋肉や関節が良い状態になり、正しく働くという法則があります。

逆に姿勢が悪いと、人間としての機能を十分に発揮できません。これは、テントをピシッと美しく張るには、安定した場所で正しくポールを組み立て、正しい位置に固定することが大事であるのと一緒です。

アライメントがどれだけ機能に影響するのかは、呼吸に意識を向けると簡単に体感できます。

まずは、前回記事で紹介した方法で、姿勢を整えましょう。

その後、両腕を下ろし、姿勢を保ったまま静かに呼吸を続けてみてください。

次に、上半身の位置を、左右どちらかにほんの少し、ずらして呼吸をします。

どうでしょう?

とたんに胸が詰まったようになり、呼吸が浅くなりませんか?

体はとても繊細です。このように、ほんのちょっとアライメントが崩れただけで、あらゆる機能が低下するのです。

“悪い姿勢”を放置してはいけない

歩行もそうです。直立二足歩行は、私たちホモサピエンスだけが持つ、素晴らしい機能です。ところがアライメントが崩れると、体がうまく使えないので、歩行の質も下がります。

猫背の人は猫背の姿勢での最高のスピードでしか走れませんし、ひざや股関節が曲がったり、偏平足だったりすると、高くジャンプできません。また、ひざが外側に倒れている人は、地面から受ける反力がまっすぐ脚に伝わりません。そのため、推進力に欠けて歩行が遅くなったり、足の外側ばかりが張ってきてO脚になったりします。

このまま放置すれば、アライメントはどんどん崩れていく一方です。姿勢が悪いと、人間が長い歴史のなかで獲得してきた素晴らしい機能を発揮できなくなります。関節や筋肉が偏った使い方になり、一部の関節や筋肉、靭帯などに負担がかかることで痛みや不調も生じます。ただ日常生活を送っているだけで、いわゆる「機能障害」が起こるのです。

体の条件が良ければ、結果は変わります。

つまりアライメントという人間の条件が整えば、関節はスムーズに動き、筋肉にかかる負担も消え、今悩んでいる姿勢の悪さや体形の崩れ、さらには痛みや不調からも解放されるのです。