商業の中心地は「ロードサイド」へ

どうしてヨーカドーの「選択」は裏目に出たのか。時代が移り変わるのだ。商業の中心地が駅前から郊外のロードサイドに移り変わっていったのである。

谷頭和希『ニセコ化するニッポン』(KADOKAWA)
谷頭和希『ニセコ化するニッポン』(KADOKAWA)

イオングループをはじめとするショッピングモールが郊外に建ち始めた。その中には、専門店(「選択」された店たちだ)がテナントとして入り、地方・郊外に住む人々のライフスタイルパターンに、ショッピングモールに車で行くことが組み込まれた。そんな時代において、「駅前出店」が苦しい局面に立たされたわけだ。

ちなみに、東京科学大学の柳瀬博一がしばしば指摘しているように、日本で車が普及してから現在まで、その総保有台数は右肩上がりで増え続けており、原理上、現在がもっともモータリゼーションが進んでいるといえる(自動車検査登録情報協会のデータによる)。その意味でも、商業の中心地は明確に「ロードサイド」にある。

ここで起こっているのは「選択と集中」自体が裏目に出てしまった、ということである。

ここに「ニセコ化」の難しさ・問題点の一つが表れる。「選択と集中」をして、その地域を一種のテーマパークにしたところで、時代におけるさまざまな要因で、「選択」自体が間違ったものになってしまうことがある。つまり、「選択と集中のテーマパーク化」においては、絶えずその方向性を確かめ、それが時代に合致しているのかを見定めることが必要なのである。

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