立地や出店では「選択と集中」をしてきたが…

もう一つ、ヨーカドーの戦略ミスとして指摘できるのは、立地戦略における「選択」ミス。

実は、ヨーカドーが拡大を行うことができた背景には、「集中」があったという意見がある。三品和広・三品ゼミ『総合スーパーの興亡』(東洋経済新報社)では、ヨーカドーの立地戦略を「集中のイトーヨーカ堂」と呼んでいる。というのも、ヨーカドーの出店方式は、出店地を慎重に選び、なおかつ近隣地域に多数出店する、いわゆる「ドミナント方式」を選択して、その地域での存在感を高めていたからだ(ちなみに、代表的なドミナント方式は、コンビニ。ファミマが通りを挟んで2軒ある光景を見たことがある人もいるかもしれないが、あれのことだ)。

特にヨーカドーが狙っていたのが関東圏。現在でも多くの店舗が関東に集結している。かなり客層を「選択」しながら拡大していったのがヨーカドーなのである。

在りし日のイトーヨーカドー福島店
イトーヨーカドー福島店(写真= Kinori/CC-Zero/Wikimedia Commons

さらに、イトーヨーカドーの立地は基本的には「駅前出店」を柱としている。駅前の一等地に大きく建物を構え、集客を狙うやり方である。そのため、かつては出店にあたって地元商店街や地域の小売店ともトラブルになるケースが多く、1984年には『イトーヨーカ堂残酷物語』なる書籍(近衛剣吉著、エール出版社)まで出版されたほど。「選択と集中」をしているからこそ、逆に対立構造も生まれたと考えられる。

つまり、むしろヨーカドーは、きわめて「選択と集中」を徹底的に行っていた企業なのだ。

しかし、その「選択」が裏目に出た。