アメリカ以外でも急激に若年層のメンタルヘルスが悪化
ブランチフラワー教授らは若年層のメンタルヘルスの悪化がアメリカ以外の国でも見られるのかという点も検証しています。
その分析結果を見ると、イギリスでも若年層のメンタルヘルスが悪化し、全年齢層の中で最もメンタルヘルスが悪化していることがわかりました。
さらに、ブランチフラワー教授らは、Global Mind Projectが提供する2020年から2024年のデータを活用し、先進国だけでなく、発展途上国も含めた34カ国の状況についても分析しています。その結果から、やはり近年、全年齢層の中でも若年層のメンタルヘルスが最も悪化していることがわかりました(*4)。
この点をもう少し具体的に見たのが図表2です。この図は、Global Mind Projectで調査されているメンタルヘルスの指標のMental Health Quotient(MHQ)の分析結果を示しています(*4)。図表の値は、ブランチフラワー教授らの論文に掲載されたもので、メンタルヘルスが悪い状態の割合を年齢別に示しています。
これを見ると、フランス、ドイツ、ヨルダン、モロッコ、アルジェリアのすべての国で、24歳以下のメンタルヘルスが最も悪い状態にあることがわかります。
以上の結果から、世界的に見て、今メンタルヘルスに問題を抱え、幸福度が最も低くなるのは、若年層だと言えるでしょう。
若年層のメンタルヘルスが悪化している原因
なぜ若年層ほど近年メンタルヘルスが悪化しているでしょうか。この点についてブランチフラワー教授らは3つの理由を指摘しています。
まず1つ目は、2009年に発生したリーマンショックの影響をまだ引きずっており、若年層を取り巻く雇用環境が悪かったことが影響している可能性です。
2つ目は、スマートフォンの普及とともに、急速に若年層に利用者が増えたソーシャルメディアの影響です。フェイスブック等に代表されるソーシャルメディアは、人々のつながりを広めた半面、自分よりも豊かな人々の生活も簡単に見ることができるようになりました。これによって、自分の現状の生活に対する満足感が下がり、メンタルヘルスの悪化につながった可能性があります。近年、若年層のソーシャルメディアの利用を禁止する国や地域も出てきている点を考えると、この可能性も無視できないでしょう。
3つ目は、新型コロナウイルスの影響です。コロナウイルスによって私たちの生活は大きな被害を受け、他者との直接的な交流や行動に大きな制限がかかりました。若年層にとってこの影響は大きく、メンタルヘルスの悪化につながった恐れがあります。