中年期に幸福度が低下する2つの理由
中年期に幸福度が大きく低下する理由として、主に次の2つの要因が指摘されています。
1つ目は、40代から50代にかけて理想と現実のギャップに苛まれ、幸福度が低下してしまうという説です。
若年期に思い描いた「大人の自分の姿」が中年期に現実になるわけですが、思い描いた理想と現実のギャップに直面した場合、「こんなはずじゃなかった」と打ちひしがれてしまうわけです。
2つ目の理由として、50歳前後で親の介護と子育ての二重の負担がのしかかり、幸福度を低下させるという説があります(*2)。
50歳前後になると親も高齢で介護が本格的に必要となる場合が増えてきます。また、子どもがいればちょうど大学進学の時期と重なり、金銭的な負担もピークとなります。これらの負担が重くのしかかり、幸福度を低下させるわけです。
また、仕事面では中間管理職として働く時期であり、仕事の責任もストレスの原因となります。日本の場合、『賃金構造基本統計調査』が示すように、直近の十年間で課長以上の管理職になれる比率が徐々に低下しているため、そもそも管理職になれない場合も増えています。管理職になったらそれはそれで大変なのですが、なれない場合はより大きなストレスとなるでしょう。
このように仕事面でもストレスが多い時期であり、幸福度が低下する原因になっていると考えられます。
若年層の幸福度が急速に悪化
年齢と幸福度の関係はU字型であり、幸福度が最も低くなるのは40代後半であるという結果は、数多くの研究で指摘されてきたこともあり、いわば「通説」でした。
しかし、この関係が崩れてきたことを指摘する研究が2024年に発表されたのです。
この分析を行ったのは、先ほどのブランチフラワー教授とユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのアレックス・ブライソン教授です(*3)。
彼らの研究によれば、2017年以降、18~25歳の若年層の幸福度が急激に悪化し、これまで幸福度が最も低かった40代後半よりも幸福度が低くなっていることがわかりました。この結果として、U字型の関係が崩れたというわけです。なお、彼らはこの点をアメリカのBehavioral Risk Factor Surveillance System(BRFSS)という40万人以上を調査したデータから導き出しています。