いまの時代にラジオを聴く魅力とは何か。ニッポン放送の「オールナイトニッポン」統括プロデューサー・冨山雄一さんは「インターネットの台頭と経費削減の波によって、ラジオ業界は一時かなり厳しいところまで追い込まれた。しかし、『タイムフリー』と『SNS』によって、ラジオ文化は鮮やかにアップデートされた」という――。

※本稿は、冨山雄一『今、ラジオ全盛期。』(クロスメディア・パブリッシング)の一部を再編集したものです。

冨山雄一さん。担当する「オールナイトニッポン」は1967年10月から続く生放送の長寿番組
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冨山雄一さん。担当する「オールナイトニッポン」は1967年10月から続く生放送の長寿番組

いつでもどこでもラジオが聴ける時代

ラジオ界にとって大きなターニングポイントとなった、ラジオ番組を配信するプラットフォーム「radiko(ラジコ)」が生まれたのは2010年3月(実用化試験配信開始)。場所や時間を超えてラジオ番組を楽しめるプラットフォームの誕生です。

「Tver」の誕生が2015年だったことを考えると、かなり早かったと思います(それほどラジオ業界が危機的状況だったということですが)。

首都圏でもエリアによってラジオが入りにくかった状況の中で、パソコンでラジオが聴けるというのは画期的なことでした。

ただし、この頃はまだ生放送中の番組が聴けるのみでタイムフリー機能はまだなかったので、オールナイトニッポン周りは、現在のような普及には至りませんでした。ラジコがラジオを劇的に変えることになるのは、2014年に居住地域以外の放送も聴ける「エリアフリー」、さらに2016年に放送時間を遡って聴ける「タイムフリー」の機能がリリースされてからのこと。

これによって、ラジオは放送された後も誰でも(1週間以内であれば)好きなときに好きなタイミングで聴けるようになったのです。

「スマホ=ラジオ受信機」が爆発的に普及

ここからが本当の意味での“勝負”の時代への突入でした。

ちょうどこの頃に、若者が人生で最初に買う携帯電話端末が「ガラケー」から「スマホ」に移行したことも、大きな転換点となりました。パソコンでしか聴くことができなかったラジコでのラジオ放送が、スマホのアプリを通じて聴けるようになったのです。

ラジオ受信機を誰も持ってない時代を飛び越え、デジタルの進化によりアプリさえ入れてくれれば「1人1台」ラジオ受信機を持つ時代が誕生したのです。

「その時間帯に聴かないと体験できない」が大前提だった生放送が、「放送後でもいつでも聴ける」というコンテンツに。これは劇的な変化でした。

ただし、いつでも聴けるといっても、選ばれなければ聴かれません。この変化は「言い訳が通用しなくなった」とも受け取れます。