※本稿は、墨屋那津子『あなたの話が「伝わらない」のは声のせい』(飛鳥新社)の一部を再編集したものです。
「自然体」が好まれる
今の時代はビジネスでもプライベートでも、人はリラックスした人、つまり自然体でいる人を好みます。ムリにキャラをつくったり、相手に合わせて好印象を得るのは現代ではむしろ難しくなっています。あなたの周りのうまくいっている人を思い浮かべてみてください。理由ははっきりしないけれども、なんとなく信頼できて、ついいろいろ話してしまう人、また会いたいと思わせる人がいるのではないでしょうか。
そういう人はたいてい、自然体なのです。どんなときも一貫して同じ声でいるほうがいい。心身がリラックスでき、相手にも信頼感を与えられます。私のボイトレを受けた生徒さんにアンケートを取ったところ、ほぼ全員が「信頼されるようになりたい」と答えています。自然な声で、自然な話し方をする。それが好印象になり、信頼されるためのもっとも確実な方法であり、「伝わる声」の原則です。
「伝わる声」には深い呼吸が伴うので、心身がリラックスしていきます。このときの声には力みがありません。深呼吸しながら話をしている感覚なので、自分自身が心地よいのです。疲れにくいので話すことにも集中できます。まるで気心の知れた友人と長時間おしゃべりしているときのように、自然に声を出せるのです。
「地声」が一番いい
「伝わる声」のベースは地声です。こう言うとほとんどの人が「え! 地声でいいんですか?」と驚きます。「地声は人前では失礼なのでは」「人前ではきちんとした声でないと」と多くの人が思っているようです。
でも実は、NHKのアナウンサーも新人研修では「地声をベースに」と教えられるのです。ただし、ただの「地声」は、親しい友達同士の会話には問題ありませんが、ビジネスや婚活のシーンのようなフォーマルな場では、声量が足りないため、相手に不機嫌そう、暗い、だらしないといった印象を与えてしまうことがあります。
「伝わる声」と、ゆるい地声は別のものです。「伝わる声」を出すためには、地声に「しっかりとした呼吸」がともなっていなければならないのです。「伝わる声」を手に入れるための具体的な方法は本書の第4章でくわしく説明しますが、「地声」は、「伝わる声」のための重要な第一歩となります。「地声を格上げ」=「伝わる声」です。とてもいい声です。