伝え方が上手い人は、何が違うのか。元NHKアナウンサーの墨屋那津子さんは「伝わりやすい言葉は、書くときと話すときで異なる。相手に話すときには、“今から何を言うか”と準備を促すのが大事だ」という――。(第2回)

※本稿は、墨屋那津子『あなたの話が「伝わらない」のは声のせい』(飛鳥新社)の一部を再編集したものです。

ビジネスマンと弁護士または裁判官のミーティング
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強調したい言葉の前で、息継ぎする

「意味のまとまり」を意識してひと息で話すと、適切な「」が生まれます。わざわざ「間をつくる」必要はなく、話の流れに沿った自然な間がつくられるのです。間は、話す側が呼吸するためだけでなく、聞く側が話の内容を理解するためにも重要な時間です。矢継ぎ早に話すと、相手は内容を整理する時間が取れず、聞いていて疲れてしまいます。

ひとまずは、1つの意味のまとまりをひと息で読めるようになれば十分です。応用編として、さらに強調したい単語や数字がある場合、その「前」で息継ぎをしてみましょう。その単語や数字が重要だと相手に伝えられます。次の例文で練習してみましょう。

例文 「今回の調査の結果により、〈息継ぎ〉70%が支持しました」

この文章で強調したいのは、「70%が支持」という点。であれば、その前に軽く息を吸ってから話すことで、相手により印象的に伝わります。強調したい箇所はだいたい「20文字に1カ所」まで。このような短い文章であれば、強調するのは1カ所で十分です。

【図表1】強調したい言葉の前で間をつくる!
強調したい言葉の前で息継ぎをすると、自然な間が生まれて聞き手に息継ぎの後の言葉が印象的に伝わる。[『あなたの話が「伝わらない」のは声のせい』(飛鳥新社)より]

「今から何を言うか」を相手に伝えておく

次は、相手に聞く準備をさせる「前置きメソッド」をお教えします。声は、相手は記憶しながら聞くので、書くときと話すときでは伝わりやすい言葉の順番が違います。話すときは、ビジネスでもプライベートでも、相手に「今から何を言うか」を前置きすると、とても伝わりやすくなります。

「意味のまとまりをひと息で読む」が、キャッチボールにおける「ボールの投げ方」だとしたら、「これから投げるよ!」と相手に言うのが重要だという話です。そのほうが相手は言葉をキャッチしやすくなります。例文で説明しましょう。

【書くときの自己紹介】
○○○○と申します。△△社××部で□□を担当しております。どうぞよろしくお願いいたします。

【話すときの伝わる自己紹介】
名前は○○○○です。会社名は△△社 部署は××です。担当は□□です。

上がメールなどの書くときで、下が話すときの伝わりやすい例です。