“お願いごと”にも活用できる

次に、日常でよく言う例を挙げます。

よくあるお願いの言い方(伝わりにくい)
「コンビニでパンと牛乳を買ってきて」

家族に買い物を頼むときによくこういう言い方をしますね。でも、この言い方だと「前置き」がないので、頼まれた人は「え? 何? もう1回言って」となったり、聞きづらいので聞き逃してしまうかもしれません。この場合も、次のように「買ってきてほしいものがある」と前置きしてから、買ってきてほしいものを言いましょう。

聞いてもらえるお願いの言い方
「コンビニで買ってきてもらいたいものがあるんだ。〈息継ぎ〉パンと牛乳の2つ」

このように、今から何を言うかを「前置き」して、相手に聞く準備をしてもらう話し方をすると、ウソみたいに伝わりやすくなります。本書の編集者は、「前置きメソッド」を使って驚きの体験をしました。中学生の子どもに「あのお皿取ってきて」と言っても聞き流されていたのに、「取ってきて。〈息継ぎ〉あのお皿」と言ったら、急にお皿を取ってきてくれたそうです。身近な人にお試しください。

オフィスで資料を確認するスタッフ
写真=iStock.com/b-bee
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「あの」「すみませんが」も効果的

あせると、例文のような「前置き」がとっさに言えないこともありますよね。そんなときは、「あの」「すみませんが」といった、あいまいな言葉で「前置き」しても十分に効果があります。いきなり本題に入るのではなく、少しでも「前置き」を入れることで、相手の注意を引きつけやすくなるからです。

結局、「前置きメソッド」を最大限に活かすためには、相手の状況や気分を読むことが欠かせません。コミュニケーションは相手あってのもの。自分のタイミングだけで話すのではなく、相手の状況に合わせることが重要です。

たとえば、上司や同僚がパソコン作業をしている最中に、急に声をかけても、十分な注意を引けないかもしれません。しかし、相手が手を止めて顔を上げたタイミングで声をかければ、こちらの言葉に集中してくれる可能性が高くなります。

また、「ちょっとお時間いいですか?」「今、話しかけてもいいですか?」というフレーズはオフィスでよく使われる「前置き」です。これも、もっと効果的にするには、具体的な時間を加えて、「ちょっと1分いいですか? 明日の会議の時間の確認です」などと、どのくらいの時間が必要かを明示します。具体的な「前置き」で、相手もより安心して聞いてくれるようになります。