加齢・炎症・免疫力低下の密な関係
そんなことから最近、inflammation(炎症)とaging(老化)を組み合わせたinflammaging(インフラメイジング)という言葉ができています。
Inflammagingが進むと、高齢者ではもともとある程度低下している各臓器の予備能力がさらに低下します。また、加齢による慢性炎症が進むと、生活習慣病が悪化していきます。
このようなことが骨髄で起きれば、免疫細胞の多くは骨髄で作られるので、当然、自然免疫も獲得免疫も低下します。また、各臓器の機能には血管やリンパ管による栄養分の運搬と代謝物の排出が大きく影響しますが、血管やリンパ管も老化をするので、これによっても各臓器の機能が落ちてきます。
さらに、免疫組織でも老化が進み、リンパ球やそれを取り巻く間質細胞もともに機能が落ち、加齢による免疫力の低下に大きく関わります。このようにして加齢と炎症、免疫力低下というのは密接に関係しています。
そこに、たとえば新型コロナウイルスによる感染が起きると、高齢者では負のスパイラルが始まり、急激に状態が悪化する可能性があります。
老化のメカニズム
最近、マスコミでアンチ・エイジングという言葉が飛び交っています。
アンチ・エイジングとは、直訳すると抗加齢、すなわち、人工的に加齢現象を止めることであり、抗老化ということになります。
年を取っても若々しくいたいというのは多くの人たちの共通の願いなので、アンチ・エイジングに役立つサプリメントや方法が開発されたという話が出てくると、一躍、大きな注目を浴びることになります。でも実際のところはどうなのでしょうか?
先述したように、加齢とともに細胞が老化すると、種々の老化関連因子(SASP因子)が作られるようになり、そのひとつに炎症性サイトカインがあります。
炎症性サイトカインはSASP因子を作る老化細胞自身を刺激して細胞老化をいっそう進めるとともに、マクロファージをはじめとする免疫細胞をよび寄せ、慢性的な炎症状態を作り出します。
つまり老化細胞が存在すると周囲の細胞にも悪影響を及ぼし、それが老化という現象をさらに進めている可能性があります。