フジ自体の広告収入も、従来見通しから233億円減少すると発表された。予想していた純利益の80%の金額が消えたことになる。これらの損失を少しでも埋めるために、大幅にカットするとしたら2つしかない。「制作費」と社員の給料などの「人件費」だ。
そうなると社員や現場の士気が下がることは避けられない。まさに「負のスパイラル」である。「ヒト・モノ・カネ」のうち「ヒト」「モノ」が劣化してゆくと、「カネ」を生み出すことは厳しくなってしまう。
「ヒト」がいなくなると「モノ」が作れない
そして「負のスパイラル」は、ドミノ倒しのような状態で次のステージに連鎖してゆく。これから起こることを予測するとすれば、以下の2つになる。
1.人材流出
2.取引先企業への影響
1.の「人材流出」は、上記に述べた「社内」のさまざまな部署の「現場」に生じたしわ寄せや弊害によって、社員の士気が下がり、同時に会社への忠誠心も薄れ、離職につながるというものだ。その理由はさまざまだろうが、これから起こり得る給与面などの人件費削減も大きな要因である。「ヒト」がいなくなると「モノ」が作れなくなる、もしくは作れてもクオリティが劣化してゆく。企業としては最も危機的な状況だ。
2.の「取引先企業への影響」は、まず考えられるのは番組を発注している制作会社だが、それだけではない。東京商工リサーチの1月24日発表のデータによると、「フジHDの取引先計(仕入・販売、直接・間接含む)は9654社」だった。業種別では、広告代理店や芸能事務所などサービス業他が2571社(構成比26.6%)で最も多い。
「フジ離れ」で犠牲になる制作会社
次いで、テレビ番組制作や電気機械器具卸売など卸売業や製造業、情報通信業など、幅広い産業に広がっている。
「これはメディアやコンテンツ事業だけでなく、不動産や観光事業など、経営の多角化が進んでいるためとみられる」と同調査は分析しているが、私はこの多角化があだとなり、今後、広範囲の業種に影響を与えるのではないかと推察している。
そして「放送業務」においては、やはり芸能事務所と制作会社への影響が大きいだろう。事務所のタレントのなかには、CMを持っていなくてテレビの出演料を生業としている者もいる。そういった人々は、フジに出続けたくても今後のことを考えて「出るのをやめよう」と考えるかもしれない。
制作会社は自転車操業で番組を作っているところが多い。そういった会社は資金繰りに苦しんだり、なかには倒産したりするところも出てくるだろう。
「フジ離れ」で他局に活路を見いだせる会社はまだいい。だが、フジと一心同体のようにして企画立案から完成までをおこなっているところもある。彼らにとって、「フジの衰退」は自らの「滅亡」を意味する。