プーチンは侵攻の出口を見いだせていない
そこでソーニン氏が提案するのが、国際的な石油生産量の拡大を通じた世界の石油価格引き下げだ。「直接的な経済制裁がなくても、石油価格を下落させることでロシアの収入を減らすことができます」と分析し、これによってロシアのウクライナ侵攻を資金面から制限できる可能性を指摘する。
ただし、この戦略の実現にはハードルもある。ソーニン氏は「トランプ氏はサウジアラビアと良好な関係を保っているものの、サウジアラビアが彼の要請だけで石油価格の引き下げに応じる可能性は低い」と慎重な見方を示す。それでも「価格引き下げに向けた外交努力の余地は残されている」と付け加えた。
ロシアの歪んだ経済構造は、すでに限界点に達しつつある。異常な金融スキームによる戦費調達は、まさに「コカイン経済」の様相を呈している。市民生活の疲弊と相まって、国内からの反戦の声は確実に高まっている。
それでもなお、プーチン氏が強気の姿勢を崩さないのは、戦時経済からの出口戦略を描けない弱さの裏返しでもある。引くに引けなくなった政権は、どこに落とし所を見いだすか。年末までに戦費が底をつくとの観測もあり、判断の期限は刻々と迫っている。

2018年7月16日、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領とアメリカのドナルド・トランプ大統領は、ヘルシンキで初の本格的な首脳会談を行った(写真=ロシア大統領府/CC-BY-4.0/Wikimedia Commons)
経済合理性を無視した強引な戦争継続か、それとも体制への打撃を覚悟した上での和平交渉か。いずれにせよ、ロシア国内の経済状況を鑑みるに、今後年単位で侵攻を継続することは極めて困難だと言えよう。