理想の働き方は、好きな仕事を長く続ける

少し話がそれましたが、ここでお伝えしたいのは、平均すれば年金受給開始以降(一般的には65歳以降)は、月々5~10万円程度の収入を得ていけば十分ということです。そう考えれば、お金の心配をしすぎずに、自分がやりたいこと、好きなことを仕事に選べそうな気がしませんか? 小さくても自分の好きな仕事をできるだけ長く続けていく。それがこれからの私たちの働き方の理想なのです。

河野純子『60歳の迎え方』(KADOKAWA)
河野純子『60歳の迎え方』(KADOKAWA)

例えば、59歳で衛星放送局を早期退職した北浦宏之さん(case1)の場合、人事に退職時期に応じた退職金の金額を聞き、社内でも噂だった「59歳で退職する」という選択肢が一番お得であることを確認。一方で自分がもらえる年金額を計算。携帯電話の契約やクレジットカードの会費なども細かく見直して退職後の収支を試算してみたところ、「住宅ローンももうないし、子どもも独立。自分にはゴルフなどお金のかかる趣味もない。妻も仕事をしている。自分の生活だけなら退職金と65歳からの年金プラスアルファで十分やっていける」と気づいて、時間の自由のない再雇用は選ばずに、早期退職を決意。スマートフォン1台で映画を撮り始めました。

監督デビュー作は自身の早期退職までの1年間を追いかけたドキュメンタリー「365DAYs+」で、定年退職を控えた同世代の会社員の皆さんから高い共感の声があがっています。収益的にはまだ赤字ですが、実に楽しそう。北浦さんの「世の中には老後の金銭的な不安をあおるような情報が多すぎる。冷静に計算してみれば、定年後こそ自由な人生を選べる」という言葉が印象に残っています。

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