単身者も月9万円の収入で大丈夫
単身者の場合も試算してみましょう。65歳以上の単身無職世帯の支出の平均は月15万7673円。女性が受け取れる年金(厚生年金受給権者)の平均額は10万9165円なので、その差は4万8508円。90歳まで働くとしてその先10年間の必要老後資金は、生活費582万960円(赤字分4万8508円×12カ月×10年)+介護費580万円で1162万960円となります。65歳から90歳の25年で割れば月々の貯金額は3万8736円。先ほどの赤字分と足せば、月々稼ぐべき金額は8万7244円となります。
ただし「ゆとりある生活費」として+5万円するならば、約14万円と少し大きな金額を稼ぎ続ける必要がでてきます。ただこれはあくまで女性の年金受給額の平均をベースにした机上の試算。男性同様の年金額を受給できる人であれば全く試算が異なってきます。また先ほど年金の受給開始時期を10年遅らせた試算を示しましたが、5年遅らせて70歳からの受給にした場合でも42%増額となり、受給額は15万5014円に。ほぼ月々の赤字は解消され、老後資金とゆとりある生活のために月9万円ほどの収入を得られればOKという試算になります。
本当に年金をもらえるのか?
これらの試算は今後も年金がちゃんともらえることを前提にしています。少子高齢化に歯止めがかからず、経済成長も不透明ななか、今後本当に私たちは年金をもらえるの? 支給開始年齢もどんどん上がってしまうのでは? という不安の声も聞こえてきます。
でもその点は心配しすぎなくて大丈夫でしょう。厚生労働省は5年に一度、公的年金の健全性を点検する財政検証を行っています。2024年がその年にあたりますが、7月に発表された結果を見ると、30年後の年金水準はいまより2割ダウン(経済成長が過去30年を投影したケース)とのこと。その程度の目減りは覚悟しておく必要はありそうですが、それでも実は女性と高齢者の働き手が増えていることを受けて5年前よりも年金財政は改善しているのです。また支給開始年齢が60歳から65歳に引き上げになるまでには法改正から30年かかっています。よって、すぐさま支給開始年齢のさらなる引き上げはないと考えていいでしょう。
一方でこの試算では退職金やすでにある貯金の投資運用、個人年金、介護が必要になる前に持ち家を売却したり、持ち家を担保に融資を受けるリバースモーゲージの活用などは考慮していません。これらの資産活用を行えば、年金の目減りや、病気による離職などの様々なリスクに備えるだけでなく、生涯収支はもっと楽な試算になる可能性が十分あります。私も60歳を迎える前にファイナンシャルプランナーに生涯収支を試算してもらって、「なんとかなるんだ」と安心しました。詳しくは第二章でふれますが、人生100年時代を賢く生きるためには「金融リテラシー」を身に付けることはとても大事。苦手な人は信頼できるプロを見つけてアドバイスをもらうことをお勧めします。