65歳以降の収入は月5万円で賄える

さて、皆さんの場合、支出と収入の差はどれぐらいになりそうでしょうか。平均値の場合、65歳以上の無職夫婦2人世帯の支出は月28万2497円、受け取れる公的年金の額(夫婦とも厚生年金受給権者)は27万6553円なので、その差(赤字額)はわずか5944円です。つまり年金が受給できる65歳からは、夫婦2人で月々1万円の収入があれば、家計は赤字にならないのです。

とはいえ「老後資金」の準備は必要です。90歳まで働き、その先100歳までを「老後」とするならば、生活費120万円(赤字分1万円×12カ月×10年)と介護費用1160万円(580万円×2人分)で1280万円を準備しておく必要があります。65歳から90歳までの25年で割れば、月々に必要な貯金額は4万2600円ほど。先ほどの5944円と足せば、夫婦2人で5万円ほどの月収が得られれば十分に賄えます。

笑顔で話す夫婦
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「ゆとりある生活」を目指すなら…

問題は年金が受給できる65歳になるまで。継続雇用を選ぶのも1つの手ですが、夫婦2人で28万円(1人14万円)の月収が得られれば生活できると考えれば、会社にしがみつかないという選択肢もありそうです。そのあたりはのちほど触れていきます。

それから繰り返しになりますが、この試算はあくまで平均値。例えば前述の平均支出のうち、住居費は月1万6827円となっています。これは持ち家比率の高さ(65歳以上で84.5%/高齢社会白書2024年)を反映したもの。賃貸派の人は当然ながら家賃を見込んでおく必要があります。また定年退職したら、旅行にも行きたい、習い事もしたいという人も多いはず。そんな「ゆとりある生活」を目指すのであれば、月38万7000円が必要というデータもあります(生命保険文化センター 60歳代が考える「ゆとりある老後生活費」2022年)。先ほどの平均支出+10万円ですから、夫婦2人で+10万円の収入(合計15万円、ひとり7万5000円)が必要ということになります。

このように個人差はありますが、平均すると65歳以降の収入の目標は、月5~10万円と試算できます。