職場のメンバーの人間関係を良好にするにはどうすればいいのか。MIMIGURI代表Co-CEOの安斎勇樹さんは「ただ忙しく仕事をこなすだけでは、共通した体験を分かち合うことはできない。チーム単位でのリフレクションを行うといい」という――。

※本稿は、安斎勇樹『冒険する組織のつくりかた 「軍事的世界観」を抜け出す5つの方法』(テオリア)の一部を再編集したものです。

オフィス会議
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忙しく仕事をこなすだけでは「共通体験」はできない

「同じ釜の飯を食った仲間」という表現があるように、共通した体験をお互いに分かち合えているかどうかは、精神的なつながりにとって大きな意味を持ちます。

冒険的なチームづくりにおいては、メンバーと共にした体験を振り返り、それに意味を見出すという作業が欠かせません。

体験を振り返って意味づける行為のことを、一般に「リフレクション(内省)」と呼びます。

リフレクションの重要性は、しばしば個人の学習や教育の領域では強調されますが、チームにとってもこの振り返りプロセスがきわめて大切なのです。

同じチームで働いているメンバーたちは、もちろんさまざまな体験を共にしています。しかしながら、ただ忙しく仕事をこなすだけでは、「共通体験」としての意味づけは進みません。「あんなことがありましたね」「たしかに、ありましたね! あの失敗が、いまのプロジェクトに活きているなあと感じます」――そんなリフレクションがあって初めて、それはチームの共通体験となるのです。

「チーム単位でのリフレクション」が必須

しかし、リフレクションに重きを置いているチームは、それほど多くはないでしょう。期末とか年度末の人事評価のタイミングで、チームについての振り返りがリーダーに求められることはあるかもしれませんが、それがほかのメンバーに共有されるケースは稀だと思います。

そのため、何年も何十年も一緒に仕事をしているのに、メンバーたちのあいだに一向に共通体験が蓄積されていかず、精神的なつながりが希薄なままに留まっているチームがたくさんあります。

冒険的チームづくりの観点からは、「チーム単位でのリフレクション」が欠かせません。できるだけ実体験から時間を空けず、こまめに振り返りを行うことをおすすめします。なんらかのプロジェクトが終了するたびごとに、あるいは、ルーティン業務なら四半期ごと・半期ごとなどで、リフレクションのスケジュールだけでもまず決めてしまいましょう。

MIMIGURIの経営チームでは、「マンスリーリフレクション」という3時間のロングミーティングを、月次で実施しています。どんなに忙しくても月末に経営チームで集まって、この1カ月間をじっくり振り返るようにしているため、組織のなかでバラバラに起きていたさまざまな出来事を「共通体験」化することができています。いいチームをつくるには、“同じ釜の飯を食べ続ける工夫”が欠かせません。