「KPT」での振り返りはあまり機能しない

最後に、チームでのリフレクションを行うときの具体的方法にも触れておきましょう。

リフレクションにはさまざまなやり方がありますが、過去の体験を次の3つに分けて振り返っていく「KPT」という方法が知られています。

・Keep――よかったこと、今後も続けたいこと
・Problem――よくなかったこと、改善すべき課題
・Try――次にチャレンジすること、具体的なアクション

KPTは、解くべき課題ととるべきアクションに主眼が置かれたフレームワークで、次の行動に迷わずに済むというメリットがあります。しかし、これが有効なのは、「Problem」の解釈が容易で、改善すべき課題が明確であるようなケースに限られます。

一方で、チームリフレクションでは、KPTはあまりうまく機能しません。というのも、本書の[KEY7]で見たとおり、チーム内では問題の解釈がバラバラになりやすく、専門的な知識・技術だけでは解決できない「適応課題」が多く紛れ込んでいるからです。モヤモヤした違和感に対して、メンバーそれぞれがKPTを使って意味づけをしていくと、解決の方向性にもまとまりが出ず、適応課題の見落としが発生しかねません。

チーム内の問題が見つかる「KMQT」リフレクション

そこで、MIMIGURIでは「KMQT」というフレームワークを使っています。

これは当社のナレッジマネジメント責任者であり、リフレクションの研究者でもある瀧知惠美が独自に開発したものです。

・Keep――印象に残っているよかったこと、これからも続けたいこと
・Moyamoya――プロジェクト活動のなかでなんとなく引っかかっていて気になること、“モヤモヤ”すること
・Question――向き合っていきたい問い、探究していきたいこと(“モヤモヤ”を問いに変換すると?)
・Try――今後やってみたいこと

KMQTにおける発明の1つは、あえて「モヤモヤ」を共有するステップを入れて、適応課題を早期に発見できるようにしたことにあります。これがあることで、些細な違和感やうまく言葉にできない感情を共有しやすくなり、チーム内の関係性の改善にもつながります。

また、これも[KEY7]で見たとおり、問題を「問い」のかたちに落とし込むことで、解決に向けた「目線合わせ」をしやすくする工夫も入っています。

プロジェクトの終了時や期末のような節目のタイミングには、ぜひメンバーで集まってKMQTに沿ったリフレクションを行い、チームの共通体験をつくってみてください。

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