“尊敬する上司”は、評価や批評をしなかった
羽佐間さんは、私が入局3年目に鹿児島から福岡に異動したとき、東京から管理職として昇進して来られました。私は羽佐間さんの放送を聞いて、この方のような放送ができるようになりたいと、ひそかに目標にしていました。
その方が直接の上司としてやってきて、「草野君、僕は君を育てるために東京から来たんだぞ」とおっしゃったのです。最高の殺し文句に感激すると同時に、「もし自分が期待に反して成長できなければ、大アナウンサーの羽佐間さんの名声まで傷つけてしまうことになる。これはよほどがんばらなくては」と、一層奮い立ちました。
その後3年間ご一緒して、本当によい指導をたくさんいただきました。羽佐間さんは、「今日の放送はここがよくなかった」「ここは悪かった」といった、評価や批評の言葉を使わないことが特徴でした。
終わったことを後から落とすのではなく、「今日の放送を聞いていたんだけれど、あの部分でこういうふうに言ったらどうだっただろう」とか、「君がこういう視点をもって臨んでいたことは、方向性としてはとてもいいと思うよ」と、次に目指すべき方向性や目標を常に示してくださっていたのです。これこそ、上司の理想の指導だなと思います。
“緊張”で失敗した知事へのインタビュー
①話し手よりもへりくだるべき
②話し手と対等の立場であるべき
私はキャスターとして、これまで本当に多くのさまざまな方にお会いして、お話を聞いてきました。現場の様子も、どれひとつとして同じではありません。リラックスしたムードのときもあれば、はりつめた状況のこともあります。
また、相手の方に楽しくお話ししていただけるような質問をすることもあれば、聞きにくいことをあえて投げかけて、お話を引き出さなくてはいけないこともあります。
インタビューでは、相手から気持ちよく話を引き出さなくてはいけませんから、どういう形で話に入ればよいか、相手の気に障るような表現をしていないかなど、相手の方の性格や傾向を考えた作戦をいろいろと立てていきます。
今までにあまり大きな失敗をしたことはないのですが、本書で前にお伝えしたように、新人アナウンサーとして鹿児島局に赴任して早々、初めて知事にインタビューをしたときには、すごく緊張しました。