注意や指導は、“伝える側の工夫”が最も必要な場面
①時短のためにも、ストレートに本題から入る
②クッションとなるような雑談をしてから、徐々に本題に移る
相手に伝える内容には、いいことばかりではなく、言いにくいこともあります。会社や学校で、あるいは家庭で、部下や後輩、わが子に対して、「こうしてほしいな」「これは注意しておいたほうがいいな」「最近ちょっとおかしいぞ」など、注意や指導をする場面が必ず出てきます。
聞く側にとって、気持ちのいいものではないことが多いので、伝える側の工夫がもっとも必要な場面かもしれません。とりわけ近頃の若い方は、自分の行動に対して他から何かを言われることへの免疫が、以前に比べてとても弱いように思えます。
私がNHKでスポーツ放送をしていたときは、先輩方から「あのときの放送は、もっとこういうふうに言ってはどうだろう」などと指導を受けることはごく当たり前でした。また、「確かにその通りだな」と、素直に受け取っていました。
しかし今は、必要なアドバイスひとつするにも、上司はとても気を遣うと聞きます。それどころか、「何を言うんですか、それが私のいいところなんです」などと反論する部下もいるそうです。
「相手にあわせた対応」が必要
そこで日ごろから、メンバーが普段はどんな様子でいるのか、そしてどんな人間性の持ち主なのか、これまで人に対してどんな対応をしてきたのかをよく見ておいて、相手に合わせた対応をしなければいけません。
素直に聞いてくれる相手だと判断したら、形式にこだわらず、「今日はこのことについて、君の考えを聞きたいのだけれど」という入り方でよいでしょう。
いっぽう、言われたことに何か一言返したい、自分は人とは違うと反発心をのぞかせておきたいタイプには、「先週は忙しそうだったけれど、もうヤマは越えたみたいだね」など、本題とは離れた柔らかい話題から入って、反応を見ながら本題に近づいていくのがいちばんでしょう。
私が出会った上司の中で、とりわけよい指導をしてくださったと思っているのは、スポーツアナウンサー時代の師匠でもある、元NHKアナウンサーの羽佐間正雄さんです。
羽佐間さんは1954年に入局され、1964年の東京オリンピック中継実況をはじめ、夏冬合計11回の五輪実況を担当されました。また、春夏の甲子園での高校野球やゴルフの全米オープンなど、大型スポーツ中継に長く携わった名アナウンサーです。