黒柳徹子は「正解したい」思いが強かった
①壁打ちテニス
②野球のキャッチボール
1986年から2024年まで、38年間続いた『日立 世界ふしぎ発見!』は、世界各地を訪れた「ミステリーハンター」が出すクイズに答えていただく番組です。
クイズとひとくちに言っても、AかBかといった二択でもないし、手がかりとなるキーワードも与えられません。ミステリーハンターがレポートする映像を見て、自分で一から答えを導き出すことが求められます。
そこで、考えるきっかけを求めて、司会者の私にいろいろな質問が飛んでくるわけです。放送では、やりとりの時間はそれほど長くないように見えるでしょう。ですが実際には、結構長い時間、いろいろなヒントを差し上げていました。
中でも、レギュラー解答者の黒柳徹子さんは、「正解したい」という強い執念をおもちでした。映像を流しているときヒントになりそうなことは全てメモを取り、私とのやりとりもメモに取る。そうやって、答えを出すために役立つと思う情報を貪欲に集め切って、「さて正解は何か」と考え始めるという具合です。
「相手に合わせたやりとり」がいい
そんな黒柳さんの質問に正面から答えていると、なかなかいいところに食いつかれて、あやうく正解につながりそうになることがあります。ですから「なるほど、この質問で私がこう返したら正解だと思っているな」と気付いたら、核心から少しそれた返しをしていました。
また、質問をした後の私の表情をじっと見ていて、「こんな反応をしたときには、いい線をついているんだな」と判断されるので、一生懸命に逆の表情を作って見せることもありました。こんなふうに、黒柳さんとは、司会者と回答者としての切磋琢磨がありました。
相手に伝える場面では、自分がきちんとやることだけに意識が向いて、相手の反応まで気が回らないこともあるでしょう。
確かに、伝えるべきことを間違わず、かつ残さずに言い切ることは大事です。しかし、やりとりというものは、野球のキャッチボールと同じです。相手に合わせた強さのボールを、相手が受け取りやすいコースで投げないと、受け取ってもらえません。
相手に合わせた言葉や反応、返し方にまで意識が行き届くようになると、今度はそのやりとりが楽しいものに変わってきます。どんな方が相手でも、きっとテニスのラリーのように話が続けられるようになるでしょう。