世界最大のテクノロジー見本市「CES」が11日(日本時間)、米ラスベガスで閉幕した。2025年のテック業界はどのような方向に進むのか。現地を訪れた立教大学ビジネススクールの田中道昭教授は「今年の最重要テーマの一つが『サステナビリティ(持続可能性)』だ」という――。(第2回/全3回)

※本稿は、富士通「テクノロジーニュース」の記事〈持続可能な未来への羅針盤 サステナビリティが切り拓く次世代テクノロジーの潮流〉(1月15日公開)の一部を再編集したものです。

サステナビリティについての主要な展開概要

近年、世界は気候変動や資源の枯渇といった深刻な地球規模の課題に直面している。こうした状況下で、テクノロジー業界は環境への配慮を最優先課題として掲げ、持続可能な社会の実現に向けた革新的な取り組みを加速させている。その象徴とも言えるのが、2025年1月に米国ラスベガスで開催されたCES2025での展開だ。本イベントは、世界最大級のテクノロジーショーとして、単なる新製品の発表にとどまらず、未来の暮らしや社会を再構築するための壮大なビジョンを共有する場として大きな注目を集めた。

今年の最重要テーマの一つである「サステナビリティ(持続可能性)」は、環境負荷を削減しつつ、社会全体にポジティブな影響を与える技術やアイデアが数多く披露され、全ての業界に新たな方向性を示す重要な契機となった。本記事では、CES2025で示されたサステナビリティに関する最前線のトレンドを通じ、未来の社会がどのように変化していくのかを探っていきたい。

CES2025の様子
出典=筆者がCES2025において撮影

消費者向けのサステナビリティの実現については、私たちの日常生活をより持続可能にするプロダクトが多数紹介された。

例えば、Bluettiが提供するスマート冷却機能を備えた冷蔵庫。この冷蔵庫は、消費電力を削減しつつ効率的な冷却を実現し、環境負荷を軽減する。Jackeryは、ポータブル電源やソーラーチャージャーを通じて再生可能エネルギーの利用を推進する。LGやSamsungの韓国大手テックメーカーは、家電にエネルギー効率を高める機能を組み込み、消費者の生活をより持続可能にする取り組みを発表。LGは消費電力を削減した最新の洗濯機を、Samsungは省エネルギー型の空調システムを展示し、家庭でのエネルギー使用を根本から見直すテクノロジーを披露した。さらに、スウェーデンのExegerが開発したソーラーパネルは、ヘッドホンやスマートデバイスなどのガジェットを太陽光で充電可能にする。

これらの取り組みは、消費者が日常的に触れる製品を通じて、環境負荷の少ないライフスタイルを選択しやすくする大きな一歩だ。

CES2025の様子
出典=筆者がCES2025において撮影
CES2025の様子
出典=筆者がCES2025において撮影

一方、企業向けのサステナビリティの実現は、企業が環境負荷を削減しつつ、カーボンフットプリントの管理やエネルギー効率化を進めるというもの。プロダクトやサービスはもちろん、事業運営全体を持続可能な形へと進化させる取り組みで、言い換えれば、「持続可能なビジネスモデルの構築」にほかならない。例えば、D-Carbonizeの会計ソフトウェアは、企業が自社のカーボンフットプリントを数値化し、影響を具体的に把握することを可能にする。このようなツールは、理念にとどまりがちな環境配慮を、具体的な目標設定や実行可能なアクションへと転換するためのきっかけとなると思った。