鳥貴族のアルバイトに感動するCEOたち
焼き鳥チェーンの鳥貴族の、コロナ後のグローバル戦略についてのレクチャーも好評だった。さらに店舗視察の際にも、興味深いエピソードがあった。
鳥貴族の店舗の入口には、「営業中」の札の代わりに「うぬぼれ中」と記された板が掲げられている。これは「今、世の中を明るくしている最中です」という意味で、「焼鳥屋で世の中を明るくしていきたい」という同社の企業理念を示すものだが、その意味をアルバイトのスタッフがきちんと説明できたことに、CEOたちは感動したという。彼らにすれば、現場の臨時アルバイトにまで企業理念が浸透していることが驚きだったようだ。
1949年創業のおでん割烹「酒房源氏」から始まり、日本国内で13ブランドを展開する物語コーポレーションの本社訪問も、彼らにとって大きな学びと共感があったという。同グループの加藤央之CEOは38歳で、参加者たちと同世代であり、次世代への事業の継承という観点から中国の若手CEOは惹きつけられたのだと思われる。
中国本土で美食家から高い評価を獲得している高級中華料理店「新栄記(シンロンジー)」の東京店(東京・赤坂)への訪問も、彼らに大きな励みを与えたようだ。同店は中国浙江省台州市で1995年に開業、北京新源南路店(3つ星)をはじめミシュランの星付き店舗を複数持つ名店で、2024年2月に開店した東京店は海外1号店にあたる。
総じていえば、彼らは日本の飲食企業の生産性の高さやイノベーション、企業理念の明確化、何より事業を継承していくプロセスに魅了されたようだ。日本では必ずしも特別なことではないかもしれないが、中国ではこのあたりのノウハウにはまだ発展の余地があり、日本の飲食チェーンの方法論を参考にできる部分が大いにあると、彼らは考えている。
日本進出は簡単ではないと認識している
一方で、自分たちのビジネスを日本で展開するのはそう簡単ではないとも、彼らは認識している。
ここ10年ほどの間、東京など大都市圏でいわゆる「ガチ中華店」が増殖する中で、中国から進出してくる飲食チェーンも増えている。中国全土に展開する火鍋(中国風の鍋料理)チェーン最大手の「海底撈火鍋」もその一つだが、初出店の2015年9月からすでに10年近くたつのに、首都圏および大阪などで数店を展開するにとどまっており、成功しているとはいいがたい。