中国経済が減速しても生き伸びるヒントを求めて
日本で見られる中国本土チェーンの店は、多くの場合直営店ではなく、在日中国人オーナーが営業権とノウハウを入手し、フランチャイズとして開店したケースがほとんどである。つまり、中国企業側は本格的にリスクを取ってまで日本進出を図ろうとはしていない。
海外に多くの同胞が居住している中国企業は、在外華人向けのビジネスは得意だ。だからといって、相手先現地の国民向けのビジネス、とりわけ食文化の違いを乗り越えていかなければならない飲食業のローカライズは簡単ではないことを、中国の飲食チェーンのCEOたちは知っているのである。
むしろ彼らが学びたいのは、30年ものデフレ不況に苦しみながら、持続的な経営を行ってきた日本企業の取り組みである。コロナ禍以降の中国経済は明らかに低迷しており、2010年代までのような単純な右肩上がりは望みにくい。そうした転換期を迎えている以上、中国企業としても以前のような、とにかく早くビジネスを拡大したものが勝ちといった投資先行型の経営を変えていかなければならない。そのモデルが、日本にあるというのである。
実際、最近も中国市場での勢いがたびたび報じられているサイゼリヤは、日本のデフレ時代のシンボル企業のひとつである。(「行列のできるサイゼリヤ(中国)」日本貿易振興機構 地域・分析レポート 2024年11月28日)
日本企業側も協業に期待
前述の参加者向けガイダンス冊子でも、「企業の持続的成長の実践的施策」と、中国でそれをどのように達成するかが強調されていた。DX(デジタルトランスフォーメーション)や高生産性を実現するための施策、企業コンセプトの浸透による従業員の定着率向上、ブランド力の向上など、日本企業から学べるポイントがそこでは指摘されている。
日本側としては、「デフレ時代の優等生のように持ち上げられても……」とやや複雑な思いを抱くかもしれない。だが、今回視察先となった日本の飲食チェーンの関係者らは、むしろ若き中国新興飲食チェーンとの協業に期待を寄せていると聞いた。現時点では中国全土というより省程度の規模で展開している、地に足がついた中規模チェーンが多いため、日本企業としても中国各地でローカル展開していく際には格好のパートナーとなり得るからだろう。