「困難の克服」と「運用のアップグレード」
このツアーを企画したのは、船井総研グループの中国飲食コンサル事業の責任者である、船井(上海)商務信息諮詢有限公司の郎禄媛董事だ。彼女はこれまで同総研が培ってきたネットワークや知見をふまえ、2016年に中国飲食チェーン経営者向けの研究会プラットフォームを立ち上げた。今回のようなツアーは、毎年実施しているという。
彼女は参加者にこう呼びかけている。「私たちは今回のツアーで日本から何を学ぶべきか。中国の飲食チェーンの進化と発展の重要な移行期である2024年は、『困難の克服』と『運用のアップグレード』がキーワードです」。つまり、勢いのある中国の新興外食チェーンが、日本進出のためまとまって視察に来たという感じではなさそうだ。
参加者向けのガイダンス用冊子には、今回のツアーの主な学びのテーマが列挙されている。「日本の飲食チェーンのグローバル展開」「海外から日本に進出する中華料理の現状」といったものに加えて、「不況下での日本の飲食チェーンの成功の道」「より高度で効果的なマーケティング戦略」「ブランド構築の長期戦略」など、このところ減速気味の中国経済の中で、ビジネスを継続させるためのヒントを探るような項目も目に付く。
大好評だったワタミ会長のレクチャー
「日本への出店はまだ様子見。出店意欲よりも、日本企業から学びたい。一緒に協業したいという気持ちが強い」と、郎ディレクターは言う。
では、若い中国のCEOたちは日本で実際に何を見聞きし、どこにヒントを見てとったのか。すべては紹介できないが、参加者に好評だったいくつかの訪問先を、郎ディレクターに挙げてもらった。
まず、創業40年を迎えるワタミグループの本社見学と、渡邉美樹会長によるレクチャーだ。日本という成熟市場で長年にわたり持続的成長を続けてきた同社の歴史に、参加者は非常に感銘を受けていたという。変化の激しい中国では、ワタミグループのように長く事業を続けることは容易ではない。起業して間もないCEOが多かったことも、一つの理由だったろう。